誘電体アンテナ(Dielectric Antenna)は、主に高誘電率セラミックなどの誘電体材料を共振器(レゾネータ)として使用し、その内部や表面から電磁波を放射(または受信)するアンテナです。
特に誘電体共振器アンテナ(Dielectric Resonator Antenna, DRA)が代表的で、マイクロ波帯やミリ波帯において、小型化と高効率化を実現する技術として注目されています。
動作原理と特徴
1. 動作原理
一般的な金属アンテナが導体(電流)を波源として電磁波を放射するのに対し、DRAは、誘電体(セラミックなど)のブロックを金属板(グランドプレーン)上に配置し、高周波信号を供給することで機能します。
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波長短縮効果: 誘電体は比誘電率Erが空気(Er≈1)よりも大きいため、誘電体内の電磁波の波長を短縮する効果があります。この波長短縮率は、およそ
となります。
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共振: 誘電体ブロックの寸法が、短縮された波長に合わせて共振するように設計されます。この共振により、電磁波エネルギーが誘電体内部に閉じ込められます。
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放射: 誘電体と空気の境界面では、誘電率の急激な変化により電磁波が外部に漏れ出し(放射)、アンテナとして機能します。
2. 主な特徴とメリット
誘電体アンテナは、特に小型化・高周波化が求められる分野で、従来の金属アンテナよりも優位性があります。
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小型化: 波長短縮効果(上記1.)により、同じ共振周波数を保ったまま、アンテナのサイズを大幅に小型化できます。これは、携帯電話やIoTデバイスなどの小型無線機器にとって非常に重要です。
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高効率: 高周波(ミリ波帯など)では、金属導体における抵抗損失が大きくなりますが、DRAは金属部分が少なく、低損失なセラミック材料を使用するため、導体損失が非常に少なく、高い放射効率を実現できます。
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多様な指向性: 誘電体ブロックの形状(円筒形、直方体、球形など)や、給電方法、使用する共振モード(TEモード、TMモードなど)を変えることで、指向性を容易に制御できます。
3. 用途
小型・高効率・高周波特性に優れるため、主に以下の分野で利用されています。
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無線通信端末: 携帯電話、スマートフォン、Wi-Fiデバイスなど
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高周波・ミリ波通信: 5G/6G通信システム
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レーダー: 車載レーダー、軍事用ミリ波レーダー機器
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衛星測位システム (GNSS): GPS受信機
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IoTデバイス: 小型センサーなど
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