DMMでの電流測定


電流測定の基本原理

  • 電流は 回路の電荷の流れそのもの

  • DMMは「シャント抵抗」を使い、電流による電圧降下を測定し電流に換算する

  • 通常のDMMでは直流(DC)・交流(AC)両方の測定が可能


基本的な接続方法

測定対象 接続方法
電流測定 必ず直列に接続
電圧測定 並列に接続

実務での重要注意点

A. 接続ミスの注意

よくあるミス 危険度 結果
並列に接続 回路短絡、ヒューズ断線
電圧端子のまま電流測定 誤表示(電流流れず0A表示)
電流端子のまま電圧測定 大電流流入 → ヒューズ溶断 → 内部破損

B. レンジ設定の注意

  • 電流の大きさが不明なときは 「高レンジから入って下げる」 が鉄則

  • 突入電流(インラッシュ)に注意

  • 定格以上の電流が流れるとすぐヒューズが溶断


C. ヒューズに関する注意

  • 電流端子には必ず保護用ヒューズが入っている

  • ヒューズが切れていると常に「0A」表示になり誤解しやすい

  • 交換時は純正・安全規格適合品を使う


D. 測定端子の入れ替え忘れ注意

  • 測定後に電流端子のまま放置すると、次の測定で事故になる

  • 測定終了後は端子を必ず戻す習慣を付ける


安全に関する注意

危険 内容
感電リスク 電流測定中は測定対象に直接接続されるため感電リスクが高い
火災リスク 大電流流入による内部部品の発熱・発煙
アーク放電 高電圧回路測定中の接続ミス
  • CAT規格に適合したDMMを使う(IEC61010-1など)

  • 絶縁手袋や保護メガネも有効


電流測定の応用的な注意点

状況 注意すること
インラッシュ電流測定 瞬時に大電流が流れるためヒューズ切れに注意
交流電流測定 DMMのAC電流帯域が狭いことがある(50/60Hz中心)
高周波電流測定 DMMは通常不向き → クランプメータや電流プローブを使用
大電流測定 一般DMMは10A程度まで → クランプメータ・シャントユニットが必要

よくある誤解と実際

誤解 実際
電流は電圧と同じように測ればいい 直列測定が必要
ヒューズが切れたらどのヒューズでもいい 安全規格品が必要
AC電流も万能に測定できる 周波数帯域に制限あり

まとめ

  • 電流測定は事故リスクが最も高い測定

  • 接続、レンジ、ヒューズ、安全 を常に確認

  • 誤操作でヒューズ破損 → 内部回路破損 → 本体故障の流れに注意

  • DMM選定時はCAT規格・ヒューズ仕様・耐圧設計も確認すると安心


一言アドバイス

「電流測定はDMMの一番壊れるポイント。
操作前に端子・レンジ・対象電流の確認をするクセが安全。」

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