EMC測定とは? ─ 電子機器の「電磁両立性」を確保するための基本試験
EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)とは、電子機器が他の機器に不要な電磁的影響を与えず、かつ外部からの電磁妨害にも影響されずに正常動作する能力を意味します。
EMC測定とは、この電磁両立性を定量的に評価するために行う試験・測定のことです。
✅ EMC測定の目的
EMC測定の主な目的は、次の2つです:
分類 | 内容 |
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EMI(電磁妨害:Electromagnetic Interference) | 機器から漏れ出すノイズが他の機器に干渉しないよう評価 |
EMS(電磁感受性:Electromagnetic Susceptibility) | 外部からの電磁的な影響に対する耐性を評価 |
✅ EMC測定が必要な理由
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法律や規格(例:CISPR、EN、FCC、VCCIなど)で製品のEMC適合が義務づけられている
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機器同士の誤動作防止(たとえばWi-Fiルータが医療機器に影響を与える等)
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海外輸出時の技術適合(CEマーキング、FCC認証など)
✅ EMC測定で行われる主な試験項目
測定項目 | 目的・内容 |
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放射エミッション(Radiated Emission) | 空間に放出されるノイズの強度を測定(MHz〜GHz帯) |
伝導エミッション(Conducted Emission) | 電源ラインなどを通じて伝わるノイズの測定(kHz〜MHz帯) |
静電気放電(ESD)試験 | 人体や機器との接触による静電気への耐性評価 |
放射イミュニティ試験 | 外部のRF電波を照射して機器の誤動作を評価 |
サージ・雷試験 | 落雷などによる一時的な過渡電圧に対する耐性評価 |
✅ EMC測定の実施場所と方法
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正式な認証試験は、認定されたEMC試験所(第三者機関)で実施されます。
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一方、**開発段階では自社内での「簡易EMC測定」**も多く行われており、ノイズ源の特定や対策効果の比較に活用されます。
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測定には、シールドルームや電波暗室、人工電源回路(LISN)、近傍界プローブ、アンテナ、信号発生器などの設備や機器が使われます。
まとめ
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EMC測定は、製品が他の機器と共存しながら安全に動作するための重要な確認手段です。
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測定内容は、「不要なノイズを出さないか(EMI)」と「ノイズに強いか(EMS)」の2軸。
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電子機器の設計・開発において、EMCを意識した回路設計・部品選定・筐体構造設計が重要です。