スペクトラムアナライザ(スペアナ)とLISN(疑似電源回路網)を使用した伝導性ノイズ(伝導エミッション)対策の基本ステップを、初心者向けに分かりやすく解説します。
製品開発において、電源線を伝わって外に出るノイズ(150kHz〜30MHz, 108MHz)を規格内に収めるために必須の測定・対策手順です。
1. 必要となる測定システム(基本構成)
まず、測定に必要な機材と接続順序を正しく理解しましょう。
EUT(測定対象機器): あなたが対策したい試作機など。
LISN(疑似電源回路網): 電源線から出るノイズを取り出し、スペアナに安全に導くためのインピーダンス整合・分離装置。
過渡リミッタ(Transient Limiter):非常に重要です。 LISN通電時やEUTの電源ON/OFF時に発生する巨大なサージ電圧から、高額なスペアナの入力ポートを保護します。
スペクトラムアナライザ: ノイズの強さと周波数を視覚化する測定器。
【接続の順番】
商用電源 ➔ LISN ➔ (信号出力ポート) ➔ 過渡リミッタ ➔ スペアナ
※LISNにはEUTの電源プラグを差し込みます。
2. スペアナの初期設定(EMI測定用)
伝導性ノイズの規格(CISPRなど)に合わせるため、スペアナの設定を以下のように調整します。
周波数範囲(Span):150kHz 〜 30MHz(伝導ノイズの一般的な測定帯域)。車載は108MHzなど。
RBW(分解能帯域幅):9kHz に設定(EMI規格の指定値)。
検波モード(Detector): 初期段階の当たり付けにはピーク(Peak)またはQ-Peak(準尖頭値)を使用します。
減衰器(Attenuator): 最初は 10dB〜20dB 程度の内部アッテネータを入れ、スペアナの破損を防ぎます。
3. ノイズ対策の具体的な4ステップ
スペアナの画面に規格値(リミット線)を超えるノイズが表示されたら、以下の手順で原因を特定し、対策を打ちます。
① ノイズの種類を見極める(コモンモード vs ノーマルモード)
伝導ノイズには2つのモードがあり、それぞれ対策部品が異なります。
ノーマル・モード(ディファレンシャル・モード): 電源の往路と復路を逆向きに流れるノイズ。
コモン・モード: 電源線とグランド(大地)の間を同じ向きに流れるノイズ。多くのEMI問題はこちらが原因です。
② ノーマル・モード・ノイズの対策
画面上、比較的低い周波数帯(数百kHz〜数MHz)でノイズが大きい場合は、ノーマルモードの可能性が高いです。
対策: 電源のL(ライン)とN(ニュートラル)の間に Xコンデンサ(アクロス・ザ・ライン・コンデンサ) を挿入します。また、差動インダクタを追加するのも有効です。
③ コモン・モード・ノイズの対策
画面上、高い周波数帯(数MHz〜30MHz)で全体的にノイズが持ち上がっている場合は、コモンモードの可能性が高いです。
対策: 電源線に コモンモード・チョークコイル(CMCC) を挿入します。また、L/Nそれぞれからグランド(筐体地)に向けて Yコンデンサ(ライン・バイパス・コンデンサ) を接続し、ノイズをグランドに逃がします。
④ グランド(接地)の強化
LISNによる測定は、グランドの状態に激しく影響を受けます。
対策: 安定した金属板(アースプレート)の上にLISNとEUTを配置し、最短・幅広の銅箔ストラップなどで強固にグランドに接地してください。グランドが不安定だと、いくらフィルタを入れてもスペアナの波形が下がりません。
まとめ:初心者が陥りがちな注意点
過渡リミッタの付け忘れに注意: EUTの電源を入れた瞬間のサージでスペアナを壊すケースが多発しています。必ずリミッタを挟んでください。
Yコンデンサの容量制限: ノイズが下がるからといってYコンデンサの容量を大きくしすぎると、漏れ電流(リーク電流)が増加し、安全規格(電気用品安全法など)に抵触する恐れがあります。規定値内に収めましょう。
より詳しいアドバイスが可能です。
対策している機器の電源の種類(例:AC100V入力のスイッチング電源、DC入力の基板など)
スペアナで見たときに、どの周波数帯(MHz帯など)でリミットを超えてしまっているか
すでに試してみた対策部品(例:フェライトコアを巻いてみた、など)
参考:
「初めてのスペアナによるEMIノイズ対策」 スペアナによるEMIノイズ測定の手順書。
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初めてのスペアナによるEMIノイズ対策 |
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