SIGLENT(シグレント) リアルタイム・スペクトラム・アナライザ SSA3000X-Rシリーズ

EMIノイズ測定におけるDwell Time(ドウェルタイム)とは、特定の周波数ポイントを測定するために費やされる時間のことです。

EMC(電磁両立性)規格に準拠した測定では、EMIレシーバーやスペクトラムアナライザを用いて、試験対象機器(EUT: Equipment Under Test)から放射されるノイズを、広い周波数範囲にわたって測定します。

この測定は、周波数を少しずつずらしながら(sweepしながら)行うのが一般的です。Dwell Timeは、この「少しずつずらした周波数ポイント」ごとに、どれだけの時間、測定器が信号をモニターするかを決定する重要なパラメータです。

 

Dwell Timeが重要な理由

 

Dwell Timeは、測定結果の信頼性に直接影響を与えます。特に以下のような場合に重要となります。

  1. 間欠的なノイズの捕捉

    • ノイズが常に発生しているわけではなく、断続的(間欠的)に発生する場合があります。

    • Dwell Timeが短いと、ノイズが発生していないタイミングで測定が行われてしまい、ノイズを見逃してしまう可能性があります。

    • 十分なDwell Timeを設定することで、間欠的なノイズが発生するタイミングを捉え、正確な測定結果を得ることができます。

  2. 準尖頭値(Quasi-Peak: QP)検波

    • EMIノイズ測定でよく使用されるQP検波は、信号のパルス幅や繰り返し周波数によって応答が変化する特性があります。

    • QP検波には時定数があり、その時定数よりも短いDwell Timeで測定すると、検波器が信号のピーク値を十分に検出できず、正確な値が得られません。

    • 一般的に、QP検波を使用する場合は、Dwell Timeを時定数(例えば1秒)と同程度かそれ以上に設定する必要があります。

 

測定時間のトレードオフ

 

Dwell Timeを長くすれば、より確実にノイズを捉えることができますが、その分、測定にかかる総時間も大幅に増加します。

  • 長いDwell Time

    • 利点:間欠ノイズを見逃しにくく、信頼性の高い測定が可能。

    • 欠点:測定に非常に時間がかかる。特に広い周波数範囲をステップ測定する場合、数時間かかることも珍しくありません。

  • 短いDwell Time

    • 利点:測定時間を大幅に短縮できる。

    • 欠点:間欠ノイズや、特定の検波器の応答を見逃す可能性がある。

近年では、この測定時間の問題を解決するために、**タイムドメインスキャン(TDS)**と呼ばれる技術が用いられることもあります。これは、FFT(高速フーリエ変換)を用いて広帯域の信号を一度に取得し、その後にデジタル処理でスペクトルを得る方法です。これにより、従来の掃引型測定よりも大幅に短い時間で、信頼性の高い測定を行うことが可能になります。

まとめると、Dwell Timeは「一つの周波数ポイントを測定する時間」であり、ノイズの種類(連続的か、間欠的か)や使用する検波器の種類を考慮して適切に設定することが、正確なEMIノイズ測定のために不可欠です。

 

SIGLENT SSA3000Xシリーズ EMIモードより