FFTとスペクトラムアナライザの違いとは?
電子回路や通信機器の評価で、「信号の周波数特性」を調べることは非常に重要です。
その手段としてよく使われるのが、オシロスコープのFFT機能と、専用のスペクトラムアナライザです。
どちらも**「信号の周波数成分を見る」ためのツール**ですが、原理・性能・用途に大きな違いがあります。
🧮 1. 基本的な違い
項目 | FFT(オシロスコープ) | スペクトラムアナライザ |
---|---|---|
測定原理 | デジタル信号をソフトウェアで高速フーリエ変換 | RF信号をアナログ変換後、周波数掃引+デジタル処理 |
目的 | 手軽な周波数分析 | 高精度なスペクトル解析 |
対象信号 | 主に低~中周波(数Hz~数百MHz) | **高周波(MHz~数GHz以上)**も測定可能 |
計測方式 | リアルタイム波形の一部を変換(短時間・窓関数依存) | 掃引方式 or リアルタイム方式(モデルによる) |
搭載機器 | デジタルオシロスコープの付加機能 | 単体の計測器、またはVNAなどとの統合型 |
🎯 2. 性能比較
項目 | FFT | スペクトラムアナライザ |
---|---|---|
周波数分解能 | 限定的(窓幅に依存) | 高精度(RBW可変、狭帯域可) |
ダイナミックレンジ | 低い(40〜60dB程度) | 高い(80〜120dB以上のモデルあり) |
スパン(表示帯域) | 広範囲は苦手 | MHz~GHz単位の掃引が可能 |
ノイズフロア | 高め(S/Nが悪化しやすい) | 低い(微小信号の観測が可能) |
コスト | 安価(FFT付きオシロが数万円~) | 中~高価格帯(数十万~数百万円) |
🧪 3. 用途別の使い分け
使用目的 | 推奨機器 |
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回路のノイズ源をざっくり確認したい | FFT(オシロスコープ) |
周波数特性の傾向を簡単に見たい | FFT(オシロスコープ) |
高周波RF信号(無線・通信)の測定 | スペクトラムアナライザ |
小さな信号の成分やスプリアスを検出したい | スペクトラムアナライザ |
EMC・EMI試験の予備解析 | スペクトラムアナライザ(専用プローブと併用) |
📌 4. 補足:FFT付きオシロのメリットと限界
メリット:
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ボタン1つで時間波形⇔周波数スペクトルに切り替え可能
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教育・入門用途に最適
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装置1台で基本測定が完結
限界:
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高周波・高精度測定には不向き
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分解能帯域幅(RBW)が固定で細かなピークが見づらい
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ノイズに埋もれた微小信号は見落としやすい
✅ まとめ
観点 | FFT(オシロスコープ) | スペクトラムアナライザ |
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利便性・手軽さ | ◎(使いやすくコスト低) | △(操作に慣れが必要) |
精度・感度 | △(簡易的な測定向け) | ◎(高度な測定や開発用途向け) |
コストパフォーマンス | ◎(1台2役として便利) | △(価格は高めだが性能は群を抜く) |
推奨ユーザー層 | 教育・一般技術者・メーカ初期評価 | RF技術者・開発エンジニア・EMC担当者 |
結論:FFTは簡易的な周波数分析に、スペクトラムアナライザは本格的なRF測定に最適です。