PsiQuantumがブリスベンで建設中の「100万量子ビット機」が完成すると、計算の世界は「予測」から「シミュレーション(再現)」へと劇的に進化します。

2026年現在の知見に基づき、そのインパクトを「暗号」と「新材料」の2軸で解説します。


1. 暗号解読:RSA暗号の終焉と「ポスト量子暗号」

現在、インターネットの安全性を支えているRSA暗号(素因数分解の困難さを利用)は、100万量子ビット級のFTQCが登場すると、**「ショアのアルゴリズム」**によって短時間で解読されるリスクがあります。

  • 解読のメカニズム: スパコン(富岳など)で数兆年かかる2048ビットの素因数分解を、FTQCはわずか数時間〜数日で完了させます。

  • 現状(2026年)の対策: 米国NIST(国立標準技術研究所)を中心に、量子コンピューターでも解けない**「耐量子計算機暗号(PQC)」**への移行が急ピッチで進んでいます。

  • リスク: 100万ビット機が稼働すると、「今すぐ解読できなくても、将来のために暗号通信データを今盗んで保存しておく(Harvest Now, Decrypt Later)」という攻撃が現実の脅威となります。


2. 新材料・創薬:原子レベルの「完全再現」

現在のスパコンによる材料開発は、実は「近似(大まかな予測)」に過ぎません。原子が20個、30個と増えるだけで計算量が指数関数的に増え、スパコンでもお手上げになるからです。

FTQCが100万量子ビットに達すると、**「量子化学シミュレーション」**が本来の力を発揮します。

期待される具体的な革新

  • 次世代蓄電池: リチウムイオン電池を超える、高容量で劣化しない新しい電解質や電極材料を、コンピュータ上で精密に設計できます。

  • 人工光合成・触媒: 肥料を作るための「アンモニア合成(ハーバー・ボッシュ法)」は膨大なエネルギーを消費しますが、植物の酵素(ニトロゲナーゼ)の仕組みを量子シミュレーションで解明できれば、省エネな常温合成が可能になり、世界の食料・エネルギー問題が解決へ向かいます。

  • 創薬: 薬の分子(100原子程度)と体内のタンパク質がどう結合するかを、細胞実験なしに100%の精度でシミュレートできます。これにより、開発期間が10年から1年へ、コストが1/10へ激減すると期待されています。


PsiQuantumが「100万」にこだわる理由

PsiQuantumが「1,000」や「10,000」ではなく、いきなり「100万」を目指しているのは、**「誤り訂正後の『論理量子ビット』を数百〜数千個確保するため」**です。

計算式のイメージ:

100万(物理量子ビット) ÷ 1,000(エラー訂正用の冗長分) = 1,000(実際に使える論理量子ビット)

この「1,000個の論理量子ビット」こそが、上記のような社会変革(暗号解読や材料革命)を起こすための最低ラインだと考えられています。

富士通が日本で行っている「既存のスパコンと繋いで効率化する」アプローチと、PsiQuantumの「圧倒的な物量で100万ビット機を作る」アプローチ、どちらが先にこの「実用化の壁」を突破するか、2020年代後半の大きな見どころです。

 

 

出典:Google Gemini

 

 

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