
産総研(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)に設立されたG-QuAT(Global Research and Development Center for Business by Quantum-AI Technology:量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター)の戦略は、「ビジネス開発」と「グローバル」を核とし、量子技術の社会実装と産業化を加速させることにあります。
G-QuATは、日本政府の「量子未来産業創出戦略」の実行ツールとしての役割を担い、量子技術のグローバルビジネスエコシステムの中核拠点となることを目指しています。
G-QuATの戦略的活動(8つの柱)
G-QuATは、以下の8つの戦略的な活動を通じて、研究開発から産業創出まで一貫した支援を目指しています。
1. グローバルな連携(Global Strategy)
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世界のトップランナーとの連携: 量子コンピュータのグローバルリーダー、ベンダー、サプライヤーなどと連携し、日米欧の強みを活かした製品開発を加速します。
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グローバル市場の形成: 国際連携によるオープンイノベーションと、グローバルスタートアップの創出を促進します。
2. サプライチェーン産業化戦略(Supply Chain Industrialization Strategy)
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量子工学(Quantum Engineering)の一貫体制: 量子回路製造、システム化、サプライチェーン、計算基盤、ユースケースに至るまで、一貫した量子工学の機能を提供します。
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「Qufab」:超伝導量子ビットや集積回路などの**デバイス製造サービス(ファウンドリーサービス)**を提供し、国内外の企業の量子素子開発を加速します。
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「Qubed」:量子システムの評価テストベッド機能を提供し、次世代機向け部品・装置の共同開発やシステムレベルの評価を支援します。
3. 産業創出支援戦略(Industry Creation Support Strategy)
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ユースケース創出: 量子コンピュータと古典コンピュータを組み合わせた量子・古典融合計算基盤を開放し、産業レベルのユースケース開発を加速します。
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インキュベーション・コラボレーション: スタートアップを含む多様なプレイヤーが集う「結節点」として機能し、ビジネスインキュベーションや共同研究を推進します。
4. 政府戦略との連携(Government Strategy Linkage)
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政府の「量子未来産業創出戦略」や「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)」など、国の重要戦略と連動し、その社会実装を担います。
5. インテリジェンス機能(Intelligence Function)
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各国政府戦略、産業動向、プレスリリース、論文、知財、投資状況などの情報を収集・分析し、国内の開発やビジネス戦略に役立てます。
6. 知的財産・国際標準化戦略(IP/Standardization Strategy)
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量子技術に関する要素技術の知財確保を支援します。
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ISO/IEC JTC 3などの国際会議で中心的な役割を担い、国際標準化を推進します。
7. 競争環境の提供
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高性能な計算資源(例:ABCI-Qなど)の提供を通じて、競争力のある開発環境を整備します。
8. グローバル人材育成
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上記の活動を通じて、量子技術に関するグローバルな人材育成を促進します。
これらの戦略により、G-QuATは**「国内の量子技術の利用者を1,000万人に」「量子技術による生産額を50兆円規模に」「未来市場を切り拓く量子ユニコーンベンチャー企業を創出」**という、2030年に向けた日本の目標達成に貢献することを目指しています。
産総研G-QuAT益一哉先生とAI・量子コンピュータの未来を語ろうテックナイト 第一部/益一哉 氏(産総研G-QuATセンター長、東京工業大学第20代学長、神戸市立高専OB) |