SIGLENT(シグレント) ベクトル・ネットワーク・アナライザ SNA6000Aシリーズ

窒化ガリウム(GaN)は、特に5G通信システムやレーダーといったミリ波領域のアプリケーションにおいて、その優れた特性から大きな期待が寄せられています。しかし、実用化にはいくつかの重要な課題も存在します。

 

期待: 高出力・高効率・小型化

 

GaNがミリ波領域で期待される最大の理由は、その優れた物性値にあります。

  • 高出力・高効率: GaNは高い電子飽和速度と大きなバンドギャップを持つため、高い電圧での駆動が可能です。これにより、シリコン(Si)やガリウムヒ素(GaAs)といった従来の半導体材料と比較して、より高い出力電力密度を実現できます。これにより、少ない素子で高出力を得られるため、高効率な電力増幅器の実現に貢献します。

  • 高周波特性: GaNは高い電子移動度を持つため、ミリ波のような高周波帯でも高速なスイッチングが可能です。これにより、通信速度やデータ伝送容量の向上に繋がります。

  • 小型化: 高い電力密度を持つGaNデバイスは、同じ出力を得るために必要な素子サイズを小型化できます。また、スイッチング周波数を高くすることで、コンデンサやコイルなどの受動部品も小型化できるため、デバイス全体やシステムの小型化、軽量化に大きく貢献します。

これらの特性は、5G基地局や移動体通信のさらなる発展、衛星通信、自動車向けミリ波レーダーなど、多くの分野で新しい可能性を切り開きます。


 

課題: 製造技術とコスト

 

GaNデバイスの実用化には、主に製造プロセスに関わる課題があります。

  • 高品質な基板の実現: GaNの結晶を成長させるための基板として、サファイアやシリコンカーバイド(SiC)が主に用いられます。しかし、これらの基板とGaNの格子定数や熱膨張率が異なるため、結晶欠陥(転位)が発生しやすく、デバイスの性能や信頼性の低下に繋がることがあります。高品質なGaN結晶基板を低コストで製造する技術の確立が依然として大きな課題です。

  • 放熱対策: GaNデバイスは高い出力密度を持つため、発熱が大きくなります。特にGaN-on-Siのように熱伝導率の低い基板を使用する場合、効率的な放熱設計が不可欠です。放熱が不十分だと、デバイスの温度上昇により性能が劣化し、最悪の場合は素子の破壊に繋がります。

  • コスト低減: SiやGaAsと比較して、GaNデバイスは製造プロセスが複雑であり、特に高品質な基板(GaN-on-GaNやGaN-on-SiCなど)のコストが高い傾向にあります。市場への普及を加速させるためには、製造プロセスの効率化とコストのさらなる低減が求められます。

 

 

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