高電圧半導体CV特性測定器 TECHMIZE TH51Xシリーズ

GaN(窒化ガリウム)半導体は、ガリウム(Ga)と窒素(N)から成る化合物半導体です。従来の半導体の主流であったシリコン(Si)に代わる、次世代のパワー半導体として注目されています。

GaN半導体は、シリコンと比べてバンドギャップが広いため、「ワイドバンドギャップ半導体」とも呼ばれます。この特性により、高耐圧・低損失での電力変換が可能となり、高効率・小型化・高速化が求められる分野での応用が進んでいます。


 

GaN半導体の主な特徴

 

特性 GaN半導体 シリコン半導体 説明
高耐圧 非常に優れる 劣る 高電圧に耐える能力が高く、絶縁破壊しにくい
低損失 非常に優れる 劣る 電力の損失を大幅に低減し、エネルギー効率が高い
高速スイッチング 非常に優れる 劣る 高速なオン・オフ動作が可能で、高周波数での動作に適している
高熱伝導率 優れる 劣る 効率的に熱を放散し、高温環境下での動作や冷却効率に優れる

これらの特性により、同等の出力でも小型化軽量化が実現し、発熱も抑えられるため、冷却機構の簡素化にも貢献します。


 

GaN半導体の主な用途

 

GaN半導体は、その優れた特性を活かし、様々な分野で活用されています。

  • 充電器・ACアダプター: 高速充電を可能にし、製品の小型化・軽量化に大きく貢献。現在、最も普及している用途の一つです。

  • LED照明: 青色LEDの材料として広く知られており、2014年のノーベル物理学賞の受賞対象となりました。

  • 電気自動車(EV): モーター駆動用インバーターや車載充電器に用いられ、システムの高効率化と小型化に貢献。

  • データセンター: サーバー用電源の効率向上と省エネ化に寄与。

  • 通信機器: 5G通信の基地局やレーダーシステムなど、高周波を扱う機器に利用されます。


 

課題

 

GaN半導体には、いくつかの課題も存在します。高品質で大口径のGaN基板を安価に製造することがまだ難しく、シリコンに比べてコストが高いことが挙げられます。また、過大な電圧に弱いという脆弱性があり、回路設計に工夫が必要となる場合があります。

 

GaN(窒化ガリウム)半導体における寄生容量とは、素子内部や周囲に物理的に存在する、意図しない静電容量のことです。これは、高速スイッチング時の損失や効率低下の主な原因となります。


 

寄生容量の種類と影響

 

GaN半導体デバイス(特にFET)の寄生容量は、主に3つの電極間(ゲート、ドレイン、ソース)に形成され、それぞれ異なる影響を及ぼします。

  • 入力容量(Ciss): ゲートとソース間の容量です。スイッチング時にゲートを充電・放電するのに必要なエネルギーに直接関係します。この容量が大きいと、スイッチング速度が低下し、ゲート駆動回路の電力消費が増加します。

  • 出力容量(Coss): ドレインとソース間の容量です。この容量が大きいと、スイッチング時の電圧変化が遅くなり、スイッチング損失が増加します。

  • 帰還容量(Crss): ゲートとドレイン間の容量です。ミラー効果と呼ばれる現象を引き起こし、スイッチング時の波形に影響を与え、スイッチング損失を増大させる原因となります。


 

GaNとSi半導体の比較

 

GaNはSi(シリコン)に比べてバンドギャップが広く、電子移動度が高いという優れた特性を持っています。これらの特性により、GaN半導体はSi半導体よりもはるかに高速なスイッチングが可能です。

GaNデバイスは、Siデバイスに比べて寄生容量が小さいという大きな利点を持っています。この特性により、GaNはSiよりも最大で100倍速くスイッチングでき、より高い周波数での動作や、高効率な電力変換を実現します。このため、GaNは高周波電源や急速充電器、電気自動車のインバータなど、高速・高効率が求められる分野でSi半導体からの置き換えが進んでいます。

 

 

 

 

 

 
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第3回 そもそも電力変換って何?4つの方式を知るだけで全ての電力変換がわかる    • ③そもそも電力変換って何?4つの方式を知るだけで全ての電力変換がわかる-次世代パワー...  
第4回 電力変換効率とその計算法と省エネが求められる諸般の事情+蛍や人間の生態系エネルギー効率は?
第5回 Web回路シミュレーターの活用(ボタンを選択するだけ!パワエレの回路動作がビジュアルで理解できる便利な無料ツール!)
第6回 Si-IGBTの新構造が続々登場!進化はまだまだ止まらない
第7回 SiC, GaN, 酸化ガリウムGa2O3, ダイヤモンド半導体を全部解説
第8回 パワーデバイスの最新応用例(特にSiCなど次世代パワーデバイスを中心に解説) a)PFC回路 b)サーバー、通信
第9回 パワーデバイスの最新応用例(特にSiCなど次世代パワーデバイスを中心に解説) c)太陽光発電 e)蓄電システム
第10回 パワーデバイスの最新応用例(特にSiCなど次世代パワーデバイスを中心に解説) e)UPS f) インダクション・ヒーター
第11回 パワーデバイスの最新応用例(特にSiCなど次世代パワーデバイスを中心に解説) g) 急速充電 h) ワイヤレス給電
第12回(シリーズ最終回) SiCパワー半導体の電気自動車EVへの使用例(走行用インバータ、オンボード充電器を一気に解説)
 
【本パワエレ基礎コースの目次】
1.パワーエレクトロニクスの基本の基本編 a)パワー半導体デバイスの種類 次世代パワー半導体の理解を目的に分類し特長を解説 (整流ダイオード、バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBT、GTO) b)そもそも電力変換って、何のために、何をしてるの? 4方式(DCDC、DCAC、ACDC、ACAC)の例を挙げて理解
2.損失の考え方と電力変換の高効率化 a)電力変換とは?その測定例 b)高効率が求められる背景 c)MOSFET損失の簡単な計算例 d)Web回路シミュレーターの活用
3.次世代パワーデバイスの種類と概説 a)Si-IGBTの新構造が続々登場 b)シリコンカーバイド c)窒化ガリウム d)酸化ガリウム e)ダイヤモンド
4.パワーデバイスの最新応用例 (特にSiCなど次世代パワーデバイスを中心に解説) a)PFC回路 b)サーバー、通信 c)太陽光発電 d) 蓄電システム e) UPS f)インダクション・ヒーター g)急速充電 h) ワイヤレス給電 i) 電気自動車への利用(オンボード充電器、トラクションモーター)
5. その他(本シリーズ外で動画公開中+順次新規公開) a)パワーデバイスの市場動向(2,3カ月毎) b)パワーMOSFETの高性能を引き出す設計例 c)新興アプリケーション紹介
 
--------このチャンネルの目的------------
 
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出典:SiCパワー半導体推進部