高電圧半導体CV特性測定器 TECHMIZE TH51Xシリーズ

GaN/SiCデバイスのC–V測定とは

~次世代パワーデバイスの電気特性を非破壊で評価する基本手法~


■ 定義

GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)を材料としたパワー半導体デバイスに対して、静電容量とバイアス電圧の関係(C–V特性)を測定する手法を「C–V測定」と呼びます。
この手法により、デバイス内部のドーピング分布、空乏層の広がり、界面準位、しきい値電圧などの重要パラメータを非破壊かつ高分解能で評価できます。


■ なぜGaN/SiCにC–V測定が必要か?

理由 説明
✅ 高耐圧・高周波用途 空乏層制御・寄生容量の最適化が求められる
✅ 新材料特有の界面問題 Siとは異なるトラップ・界面準位の影響を把握
✅ プロセス管理 ドーピング制御・酸化膜形成のばらつき評価
✅ 信頼性・寿命設計 バイアスストレスによる特性変動の事前把握

■ 測定対象となる構造例

デバイス 測定対象
GaN HEMT ゲート下のキャリア密度・空乏制御
SiC MOSFET 酸化膜容量(Cox)、界面準位(Dit)、しきい値電圧(Vth)
ダイオード(SBD, PiN) 結合容量、拡散深さ、空乏層容量変化
MIS構造(AlGaN/GaNなど) 絶縁膜特性、界面欠陥密度

■ 測定の基本構成

C–V測定は以下のような測定器構成で行われます:

  • CVU(Capacitance–Voltage Unit)

  • 高電圧DCバイアス源(±数10V~±1kV)

  • 周波数可変のAC信号源(例:1kHz~1MHz)

  • プローブステーション or 専用ソケット


■ 主な測定パラメータと抽出例

パラメータ 内容 応用
C–V曲線 電圧に対する静電容量変化 空乏領域の広がり、しきい値電圧
1/C²–Vプロット 線形化してドーピング密度を抽出 拡散プロファイル評価
Cox(酸化膜容量) 酸化膜厚から推定 絶縁膜の均一性・プロセス管理
Dit(界面準位密度) HF–LF差分やコンダクタンス法で抽出 信頼性・トラップ評価

■ 測定時の留意点(GaN/SiC特有)

項目 説明
✅ 高抵抗材料への対応 AC信号周波数・振幅の最適化が重要
✅ 界面トラップ応答 周波数依存性を考慮してHF/LF測定併用
✅ 寄生インダクタンス抑制 高周波ノイズ対策・ケーブル配置に注意
✅ プラズマダメージの影響 プロセス由来の界面欠陥を含めて解析

■ 測定例:SiC MOSFETのC–V曲線

mathematica
C
| ╭───蓄積(Cox
| /
| /
| ╯ 空乏領域(C減少)
|
| ╰──反転容量(一定以下に収束)
+------------------------→ ゲートバイアスV

■ T&Mコーポレーションの対応ソリューション

  • ✅ GaN/SiC対応のC–V測定装置(例:TECHMIZE TH512)

  • ✅ ±100V以上のゲートバイアス印加対応

  • ✅ サンプル形状に応じたプローブ冶具設計

  • ✅ 高温環境でのC–V測定にも対応可(要オプション)


■ まとめ

項目 内容
定義 GaNやSiCなどのワイドバンドギャップ半導体デバイスに対する静電容量-電圧測定
目的 ドーピング評価、界面品質確認、MOS構造の信頼性確認など
利点 非破壊、定量的、製造工程の評価に有効
関連装置 CVU、LCRメーター、プローブステーション、高電圧バイアス電源

T&Mコーポレーションでは、次世代パワーデバイス向けのC–V測定評価環境をトータルでサポートいたします。測定項目の選定から装置導入、解析支援まで一貫して対応可能です。お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

 
下記資料では「次世代パワー半導体を理解するためのパワエレ基礎」について動画で詳しく解説されています。
 
 
次世代パワー半導体を理解するためのパワエレ基礎コース-パワエレ初級から中・上級へステップアップしよう!全12回視聴して、初級から中・上級へステップアップ確実!うけおいます! 【本シリーズ全12回のリスト】
第1回 整流ダイオード、バイポーラトランジスタ、ショットキーバリアダイオードの基本原理を理解し、バイポーラ型・ユニポーラ型の長所短所を知ろう
第2回 MOSFET、IGBT、サイリスタの基本原理を理解し、オンオフさせる妙技を知ろう   • ②MOSFET、IGBT、サイリスタの基本原理を理解し、オンオフさせる妙技を知ろう-...  
第3回 そもそも電力変換って何?4つの方式を知るだけで全ての電力変換がわかる    • ③そもそも電力変換って何?4つの方式を知るだけで全ての電力変換がわかる-次世代パワー...  
第4回 電力変換効率とその計算法と省エネが求められる諸般の事情+蛍や人間の生態系エネルギー効率は?
第5回 Web回路シミュレーターの活用(ボタンを選択するだけ!パワエレの回路動作がビジュアルで理解できる便利な無料ツール!)
第6回 Si-IGBTの新構造が続々登場!進化はまだまだ止まらない
第7回 SiC, GaN, 酸化ガリウムGa2O3, ダイヤモンド半導体を全部解説
第8回 パワーデバイスの最新応用例(特にSiCなど次世代パワーデバイスを中心に解説) a)PFC回路 b)サーバー、通信
第9回 パワーデバイスの最新応用例(特にSiCなど次世代パワーデバイスを中心に解説) c)太陽光発電 e)蓄電システム
第10回 パワーデバイスの最新応用例(特にSiCなど次世代パワーデバイスを中心に解説) e)UPS f) インダクション・ヒーター
第11回 パワーデバイスの最新応用例(特にSiCなど次世代パワーデバイスを中心に解説) g) 急速充電 h) ワイヤレス給電
第12回(シリーズ最終回) SiCパワー半導体の電気自動車EVへの使用例(走行用インバータ、オンボード充電器を一気に解説)
 
【本パワエレ基礎コースの目次】
1.パワーエレクトロニクスの基本の基本編 a)パワー半導体デバイスの種類 次世代パワー半導体の理解を目的に分類し特長を解説 (整流ダイオード、バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBT、GTO) b)そもそも電力変換って、何のために、何をしてるの? 4方式(DCDC、DCAC、ACDC、ACAC)の例を挙げて理解
2.損失の考え方と電力変換の高効率化 a)電力変換とは?その測定例 b)高効率が求められる背景 c)MOSFET損失の簡単な計算例 d)Web回路シミュレーターの活用
3.次世代パワーデバイスの種類と概説 a)Si-IGBTの新構造が続々登場 b)シリコンカーバイド c)窒化ガリウム d)酸化ガリウム e)ダイヤモンド
4.パワーデバイスの最新応用例 (特にSiCなど次世代パワーデバイスを中心に解説) a)PFC回路 b)サーバー、通信 c)太陽光発電 d) 蓄電システム e) UPS f)インダクション・ヒーター g)急速充電 h) ワイヤレス給電 i) 電気自動車への利用(オンボード充電器、トラクションモーター)
5. その他(本シリーズ外で動画公開中+順次新規公開) a)パワーデバイスの市場動向(2,3カ月毎) b)パワーMOSFETの高性能を引き出す設計例 c)新興アプリケーション紹介
 
--------このチャンネルの目的------------
 
SiCパワーデバイスの最新技術や特徴を分かりやすく説明したYouTubeチャンネルです。    / @sic-powersemiconductor   パワー半導体とは?なんに役立ってるの? 最近よく聞くワイドバンドギャップ・パワー半導体って何? なぜ今、SiC、GaN、酸化ガリウムやダイヤモンドが注目を浴びているの? シリコンのパワー半導体と比べて何が違うの?その特徴と長所は? どんなところ(装置や製品)に使われるの? パワー半導体の旬な情報を丁寧に分かりやすい動画にしてアップしています。 資料のご請求・ご質問がありましたらいつでもご連絡下さい。
 
出典:SiCパワー半導体推進部
 
 
 

関連製品

関連製品