IBERTなどのツールで表示されるアイ・スキャン(Eye Scan)の結果は、高速信号がどれだけ「健全に」受信端に届いているかを視覚化したものです。28Gbps(NRZ)と56Gbps(PAM4)では、見るべきポイントが大きく異なります。
それぞれの評価基準と、波形が悪い場合の判断材料を整理します。
1. NRZ(2値)のアイ・スキャン
28GbpsなどのNRZ信号では、1つの「目(Eye)」を確認します。
中央の開口部(Eye Opening):
高さ(Vertical Margin): ノイズに対する耐性を示します。ここが狭いと、わずかな電圧変動で誤判定が起こります。
幅(Horizontal Margin / Unit Interval): ジッタに対する耐性を示します。左右の「交差点(Crossing)」が太い場合は、クロックの揺らぎ(ジッタ)が大きいことを意味します。
理想的な形状:
中央部が真っ青(またはBERが極めて低い色)で、上下左右に十分な余白がある「クッキリとした目」が理想的です。
2. PAM4(4値)のアイ・スキャン
56Gbpsなどで使われるPAM4は、電圧レベルが4段階あるため、縦に3つの目が並びます。
3つの目の対称性:
上(Upper)、中(Middle)、下(Lower)の3つの目が、均等に開いているのがベストです。
特性: 通常、中央の目が最も大きく開き、上下の目は少し潰れやすくなります。
判定しきい値:
PAM4では「00」「01」「10」「11」の境界線が3本あります。どれか1つの目でも閉じていると、その電圧レベルのビット判定でエラーが多発します。
3. 「悪い波形」から推測できる原因
アイ・スキャンの形状が崩れている場合、物理層のどこかに問題があります。
症状 | 推測される原因 | 対策の方向性 |
全体的にアイが小さい(高さがない) | 誘電損失が大きい、または伝送路が長すぎる。 | CTLEのピーキングゲインを上げる、または低損失基板(Megtron 7等)への変更。 |
アイが左右から潰れている(幅がない) | クロックのジッタ、または高域のロスによる符号間干渉。 | リファレンスクロックのクリーンアップ、またはDFEの調整。 |
アイの中に「影」や「二重線」がある | 信号の反射(Impedance Mismatch)。 | コネクタのフットプリント設計の見直し、ビアのバックドリル確認。 |
PAM4で特定の目だけ潰れている | 送信側の非線形性、またはDCバランスの崩れ。 | 送信側(TX)のプリエンファシスや電圧スイングの微調整。 |
4. BER(ビット誤り率)との関係
アイ・スキャンの色は、通常その地点での推定BERを表しています。
青/黒(中心部): エラーがほぼゼロ(10-12 以下など)。
赤/黄(境界部): エラーが発生し始めている領域。
統計的アイ・スキャン: 短時間のスキャンでは見えない「稀に起こるエラー」を統計的に予測して描画します。
実務での合格ライン
NRZ: FECなしで 10-12 以下が目標。
PAM4: 生のBER(Raw BER)が 10-4 ~ 10-5 程度であれば、FEC(誤り訂正)を通すことで実用上のエラーフリー(10-15 以下など)を達成できる設計が一般的です。
次のステップへの提案
現在お手元にあるスキャン結果で、「アイが上下に潰れている」や「左右の幅が極端に狭い」といった具体的な傾向はありますか?それとも、IBERTのスイープ機能で最適解を探している最中でしょうか?もし具体的なスキャンの数値(UI幅やmV高さ)があれば、より詳細な診断が可能です。
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