SIGLENT(シグレント) ベクトル・ネットワーク・アナライザ SNA6000Aシリーズ
差動Sパラメータを含むs4pファイルは、差動信号を扱う高速デジタル回路や高周波回路の特性を記述するためのファイルです。ここでは、その概要と用途を説明します。

差動Sパラメータとは

差動(ミックスモード)Sパラメータとは、通常のシングルエンド(単一終端)Sパラメータとは異なり、2つの信号線が対になって伝送される差動信号の特性を記述するパラメータです。
    • シングルエンドSパラメータ
        • 各ポート(入出力端子)の反射・透過特性を記述します。
        • 4ポートの差動回路の場合、ポート1、2、3、4間のシングルエンドでの特性を記述します。

    • 差動Sパラメータ(ミックスモードSパラメータ)
        • 差動モードとコモンモードの信号の振る舞いを記述します。
        • 4ポート(2つの差動ペア)の場合、以下の4種類の特性を定義します。
            • 差動モードから差動モード(Sdd)への伝達: 差動信号が、どれだけ差動信号として伝わるかを表します(挿入損失など)。
            • コモンモードからコモンモード(Scc)への伝達: コモンモード信号が、どれだけコモンモード信号として伝わるかを表します。
            • 差動モードからコモンモード(Scd)への変換: 差動信号が、どれだけコモンモード信号に変換されるかを表します。
            • コモンモードから差動モード(Sdc)への変換: コモンモード信号が、どれだけ差動信号に変換されるかを表します。
 
s4pファイルとは
s4pファイルは、タッチストーン(Touchstone)というファイル形式の1つで、4ポートのSパラメータのデータを格納します。
    • .sNpという形式をとり、Nがポート数を表します。
    • 4ポート(s4p)の場合、2つの差動ペア、あるいは4つのシングルエンド信号を扱うことができ、その周波数特性を記述します。

s4pファイルの用途
差動Sパラメータを含むs4pファイルは、以下のような用途で使われます。
    • 高速デジタル通信
        • USB、PCI Express、ギガビットイーサネットなどの高速インタフェースの差動信号路(配線パターン、コネクタ、ケーブルなど)のシミュレーションと評価に使われます。

    • シグナルインテグリティ(SI)解析
        • プリント基板上の差動配線の反射やクロストークなどの信号品質を解析します。

    • EMC(電磁両立性)解析
        • 差動モード信号がコモンモード信号に変換される特性(モード変換)を評価し、コモンモードノイズの発生を予測します。

    • 回路設計
        • 高周波回路やアナログ回路で、差動アンプやバランなどの設計・評価に利用されます。

s4pファイルの扱い方
s4pファイルは、以下の手順で利用されます。
    1. 測定
        • 4ポートのネットワークアナライザ(VNA)を使って、対象の回路やデバイスのSパラメータを測定します。

    2. ファイル出力
        • 測定したSパラメータは、タッチストーン形式のs4pファイルとして出力されます。

    3. 解析・シミュレーション
        • SPICEシミュレータなどの回路シミュレーションソフトウェアに取り込み、回路全体の動作を解析します。
        • MathWorksのMATLABなどでは、専用のツールボックスを使って、s4pファイルから差動Sパラメータを抽出し、解析できます。

 
こちらの資料では、差動Sパラメータ、ミックスドモードSパラメータ、平衡回路について詳しく解説されています。

EMC村の民「ミックスドモードSパラメータとは」より

 

ミックスドモードSパラメータは、平衡回路や差動伝送回路の特性を表すときに使用されるパラメータで、例えばUSBやHDMIといった高速の差動通信規格の評価に使用されています。

そこで今回は、まずはじめにSパラメータについて簡単におさらいした後に、ミックスドモードSパラメータの概要とその評価方法について解説します。

 

出典:engineer-climb.com/mixed-mode-sparameter/

EMC村の民「平衡回路と不平衡回路」より

 

平衡回路と不平衡回路の「特徴」と「用途」について解説します。

 

出典:engineer-climb.com/balanced/

EMC村の民「ポートネットワークアナライザの活用方法」より

 

SIGLENT製のSNA5004Aをもとに 4ポートネットワークアナライザ(VNA)の活用方法を解説しています。

 

出典:engineer-climb.com/4port-sna5004a/