
ミックスドモードSパラメータは、USB、HDMI、PCI Express、1000BASE-T1、10GBASE-T1などの高速差動信号伝送路の特性を評価するための非常に重要な指標です。これは、信号の伝わり方や反射だけでなく、ノイズの発生や耐性も評価できるため、現代の電子機器設計に不可欠となっています。
ミックスドモードSパラメータをタッチストーンファイルで扱うには、通常、シングルエンドSパラメータとして測定・保存されたファイルを、シミュレーションソフトウェアや専用のツールを使用してミックスドモードに変換します。
タッチストーンファイル(*.sNp)は、周波数依存の線形ネットワークを記述するための標準化されたフォーマットです。
CAEツールではネットワークアナライザと同様に、シングルエンドのSパラメータをミックスドモードSパラメータに変換して使用します。
通常のSパラメータとミックスドモードSパラメータは相互に変換可能であることが大きなメリットであり、この変換処理は計測器やCAEツールといったハードウェアに依存しません。
「ミックスドモードSパラメータで保存し、CAEで使用する」こともCAEツールによっては可能ですが、少なくともミックスドモードSパラメータでなければならない特別な理由はないです。(変換作業が手間、ミックスドモードSパラメータに最適化された自作テンプレートを使用している、などの理由があれば別です)
電子部品メーカーのミックスドモードSパラメータの提供について
その中身は通常の4ポートSパラメータのデータが格納されてと思われます。
M田製作所の場合では、「SimSurfing」という設計ツールの中で、通常のSパラメータをミックスドモードSパラメータに変換して表示していると考えられます。
たとえばコモンモードチョークコイル(CMC)の挿入損失はミックスドモードSパラメータで規定されていますが、その測定自体は通常の4ポートSパラメータで行われているようです。
まとめ
ミックスドモードSパラメータは、単に信号がどれだけ減衰するかだけでなく、信号がノイズに変わる量(EMI)や、ノイズが信号に与える影響(イミュニティ)を定量的に評価できる強力な指標です。
CAEツールを駆使してこのパラメータを活用することで、製品を実際に製造する前に、高速信号伝送における信号品質やEMCの問題をPC上で詳細に分析・解決することができ、開発の手戻りを減らし、信頼性の高い製品設計を実現します。
この動画では、ミックスドモードSパラメータの基本的な考え方について分かりやすく解説されています。
EMC村の民「ミックスドモードSパラメータとは」より
ミックスドモードSパラメータは、平衡回路や差動伝送回路の特性を表すときに使用されるパラメータで、例えばUSB、HDMIや10GBASE-T1といった高速の差動通信規格の評価に使用されています。 はじめにSパラメータについて簡単におさらいした後に、ミックスドモードSパラメータの概要とその評価方法について解説します。
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EMC村の民「平衡回路と不平衡回路」より
平衡回路と不平衡回路の「特徴」と「用途」について解説します。
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EMC村の民「ポートネットワークアナライザの活用方法」より
SIGLENT製のSNA5004Aをもとに 4ポートネットワークアナライザ(VNA)の活用方法を解説しています。
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EMC村の民「コモンモードチョークコイルの選び方」より
コモンモードチョークコイルの「概要」「特徴」「注意事項」について解説します。 コモンモードチョークコイルは、ディファレンシャルモードに対して低いインピーダンスとなる必要があり、これをミックスドモードSパラメータで表現すると、ディファレンシャルモードの減衰量Sdd21が高い周波数まで小さい必要があることなどと解説。
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