
「安定性の高いModCodに切り替わる」とは、通信環境が悪化し、電波の品質(信号対雑音比)が低下した際に、通信の途絶やデータエラーを防ぐために、システムが自動的に通信速度を落とすように符号化(Coding)と変調(Modulation)の組み合わせ(ModCod)を変更することです。
これは、アダプティブ・コーディング・変調(ACM)という技術の中核的な動作です。
**「ModCod(モドコド)」
安定性の高いModCodの特徴
安定性が高いModCodは、通信速度(スループット)は低くなりますが、データがノイズや減衰によって破損するのを防ぐ力が強くなります。具体的には、以下の特徴を持った方式に切り替わります。
1. 低次変調(QPSKなど)への切り替え
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「変調」は、1回の電波の波で運べる情報量(ビット数)を決定します。
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高次変調(例:64APSK)は一度に多くのビットを運べますが、電波の品質が少しでも乱れると、受信機が「1」と「0」を間違えやすくなります(ノイズに弱い)。
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低次変調(例:QPSK)は一度に運べるビット数は少ないですが、信号間の距離が大きいため、多少ノイズが乗っても「1」と「0」を正確に判別しやすく、安定性が高いです。
2. 低い符号化率(Coding Rate)への切り替え
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「符号化」は、データに誤り訂正用の冗長な情報(パリティ)を付加する割合です。
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高い符号化率(例:8/9)は、付加する冗長情報が少ないため、高速ですが、エラーが発生した際の復元能力が低いです。
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低い符号化率(例:1/2)は、元のデータ量に対して多くの冗長情報を付加するため、通信速度は落ちますが、多くのエラーを訂正でき、非常に安定します。
まとめ
つまり、「安定性の高いModCod」とは、「低次変調+低い符号化率」の組み合わせであり、「速度を犠牲にしてでも、データの到達を確実にする」ための設定と言えます。
切り替わるメカニズム
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環境の監視: 受信機(衛星通信では地上のVSAT端末など)が、常に受信した信号の品質、特に(信号対雑音比)を測定します。
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フィードバック: 受信機はその測定結果を送信機(衛星やハブ局)にフィードバックします。
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自動切替: 送信機は、SNRが特定の閾値を下回った場合、データエラーを避けるために自動的に低速かつ高安定なModCod(例: 64APSKからQPSKへ)に切り替えて送信を開始します。
このリアルタイムな切り替えによって、Vバンドのような降雨減衰の影響を受けやすい周波数帯でも、悪天候時に通信の途絶を防ぐことが可能になります。
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