
MOSキャパシタの測定は、主にその静電容量-電圧(C-V)特性と電流-電圧(I-V)特性を評価することで行われます。これらの測定により、酸化膜の厚さや界面準位密度など、デバイスの重要な電気的特性を抽出できます。
1. C-V特性測定
MOSキャパシタのC-V特性は、ゲートにDCバイアス電圧を印加しながら、小さなAC信号を重ねてその静電容量の変化を測定する手法です。これは、MOSキャパシタがDCバイアスによって蓄積・空乏・反転という3つの状態に変化し、それに伴って静電容量が大きく変わるためです。
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測定原理
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測定装置: LCRメーターや半導体パラメータアナライザなどを使用します。
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DCバイアス: ゲートに印加するDC電圧をマイナスからプラス(またはその逆)に掃引します。これにより、MOSキャパシタの内部状態が変化します。
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AC信号: 掃引中のDCバイアスに、100 kHzや1 MHzといった高周波の小さなAC信号を重ねて印加します。
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静電容量の測定: LCRメーターは、このAC信号に対する電流応答を測定し、静電容量を算出します。
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測定結果の解析
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高周波C-V特性: 高周波での測定では、半導体表面がキャリアの応答が追いつかず、空乏層の静電容量が支配的になります。この特性から、酸化膜の厚さ()やフラットバンド電圧()、しきい値電圧()などを算出できます。
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低周波C-V特性(準静的C-V特性): 低周波での測定では、キャリアがAC信号の周波数に追従できるため、反転層が形成され、静電容量が大きく増加します。高周波特性と低周波特性を比較することで、界面準位密度を評価できます。
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2. I-V特性測定
MOSキャパシタのI-V特性は、ゲートにDC電圧を印加した際のリーク電流を測定するものです。
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測定原理
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測定装置: 半導体パラメータアナライザや高感度な電流計(エレクトロメーター)を使用します。
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DCバイアス: ゲート電圧を掃引しながら、ゲートと基板間の電流を測定します。
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リーク電流の評価: 理想的なMOSキャパシタでは、酸化膜が絶縁体であるため電流は流れませんが、実際には微小なリーク電流(トンネル電流など)が存在します。
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測定結果の解析
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絶縁破壊電圧: ゲート電圧を上げていくと、ある電圧で酸化膜が破壊され、急激に電流が流れます。この電圧を**絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage)**といい、酸化膜の信頼性評価に用いられます。
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リーク電流密度: 酸化膜の品質や薄さを評価するために、特定の電圧でのリーク電流を測定し、電流密度を算出します。
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3. 測定時の注意点
正確な測定のためには、以下の点に注意が必要です。
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ケルビン接続(4端子法): 接触抵抗や配線抵抗の影響を排除するために、電圧印加端子と電流測定端子を分ける4端子法(ケルビン接続)を用いることが推奨されます。
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浮遊容量の補正: プローブやケーブル、測定治具に由来する浮遊容量が測定値に影響を与えるため、オープン補正やショート補正といったキャリブレーション(校正)が必要です。
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温度制御: MOSキャパシタの電気的特性は温度に依存するため、測定中は温度を一定に保つ必要があります。