マルチフィンガー GaAs pHEMT(Pseudomorphic High-Electron Mobility Transistor)は、ガリウムヒ素(GaAs)基板上に作製される高速・高周波トランジスタで、特に高出力や低ノイズが求められるマイクロ波・ミリ波帯の集積回路(MMIC)に広く利用されます。
「マルチフィンガー」構造とは、単一のトランジスタのゲートを一つではなく、複数の細長い「フィンガー」(指)状に分割し、それを並列に接続したレイアウトのことを指します。
🏗️ マルチフィンガー構造の目的と利点
トランジスタの出力電流や電力容量は全ゲート幅 (W)に比例します。全ゲート幅を大きくする方法として、ゲートフィンガーの長さ (W0) を伸ばす方法と、フィンガーの数 (Nf) を増やす方法がありますが、マルチフィンガー構造は主にフィンガーの数を増やし、性能を最適化することを目的としています。
1. 高出力化と電流容量の増大
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全ゲート幅 (W = Nf X W0) を増やすことで、最大ドレイン電流 (ID,max) と出力電力容量を直線的に増加させることができます。これは、パワーアンプ(PA)設計において特に重要です。
2. 高周波性能の改善(寄生抵抗の低減)
マルチフィンガー構造の最大の利点は、寄生抵抗を低減し、デバイスの高速性能を向上させる点にあります。
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ゲート抵抗 (Rg) の低減:
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ゲートフィンガーを多数並列接続することで、各フィンガーを通じて流れる電流の経路が短くなり、実効的なゲート抵抗を大幅に減少させることができます。
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低いRgは、トランジスタの最大発振周波数 (fmax)やノイズ性能(最小ノイズ指数 NFmin)を向上させる上で極めて重要です。
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熱設計の改善:
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熱源となるアクティブなチャネル領域を分散配置できるため、単一の長いゲートフィンガーを使用した場合に比べてチャネルの自己発熱を抑制し、信頼性と性能の安定性を向上させることができます。
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3. その他
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レイアウトの柔軟性: 全ゲート幅を維持しつつ、フィンガーの長さと本数の組み合わせ(例:4 X 25μm と 2 X 50 μm)を変えることで、特定の回路要求(例:特定の Rg 値や寄生容量)に応じたトランジスタ設計が可能になります。
💡 GaAs pHEMT の特徴
マルチフィンガー構造が適用されるGaAs pHEMTは、その材料特性と構造から、以下の優れた特性を持ちます。
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高い電子移動度: GaAsとInGaAsのヘテロ接合を用いる擬似整合(pseudomorphic)構造により、電子が移動するチャネル(InGaAs層)に**二次元電子ガス(2DEG)**が形成され、電子の移動度が高くなります。
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高周波動作: 高い遮断周波数 (fT) と最大発振周波数 (fmax) を持ち、100 GHzを超えるミリ波帯での動作が可能です。
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半絶縁性基板: GaAs基板自体が半絶縁性であるため、MMICにおいてマイクロストリップ線路やコプレーナ導波路といった伝送線路を低損失で形成するのに適しています。
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