RFアナログ信号発生器におけるパルス変調は、高周波(RF)搬送波をパルス状に変調することで、特定の時間パターンを持つ信号を生成する技術です。これは、レーダー、通信、電子戦、医療などの幅広い分野で不可欠な機能です。

パルス変調における主要なポイントは以下の通りです。

  1. パルス波形の特性
  • パルス幅(Pulse Width: PW): パルスが「オン」になっている時間。50%振幅点間の時間で測定されるのが一般的です。これは、信号が有効な期間を示します。
  • パルス繰り返し周期(Pulse Repetition Interval: PRI)/ パルス繰り返し周波数(Pulse Repetition Frequency: PRF):
    • PRI: パルスの開始から次のパルスの開始までの時間間隔。
    • PRF: 1秒あたりのパルスの繰り返し回数で、PRIの逆数 (PRF=1/PRI) です。
  • デューティサイクル(Duty Cycle): パルス幅をパルス繰り返し周期で割った値(DutyCycle=PW/PRI)。パーセンテージで表され、信号が「オン」になっている時間の割合を示します。
  • ピーク電力(Peak Power): パルスが「オン」になっている間の瞬時最大電力。
  • 平均電力(Average Power): パルス繰り返し周期全体の平均電力。これはデューティサイクルとピーク電力の関係で表されます(AveragePower=PeakPower×DutyCycle)。
  • 立ち上がり時間(Rise Time)/ 立ち下がり時間(Fall Time): パルスの振幅が10%から90%(または他の定義)に変化するのにかかる時間。これらの時間は、パルス波形の「鋭さ」やスペクトル特性に影響します。
  • パルス垂れ(Pulse Droop): パルスが「オン」になっている間に信号レベルが減少する現象。
  1. 変調方式の種類

パルス変調には、主に以下の3つの基本的なタイプがあります。

  • パルス振幅変調(Pulse Amplitude Modulation: PAM): パルスの振幅を変化させることでデータを表現します。アナログ信号のデジタル変換の基礎となることもあります。
  • パルス幅変調(Pulse Duration Modulation: PDM)/ パルスデューティサイクル変調(Pulse Width Modulation: PWM): パルスの幅(デューティサイクル)を変化させることで情報を符号化します。モーター制御や照明の調光、デジタルオーディオアンプなどで広く利用されます。
  • パルス位置変調(Pulse Position Modulation: PPM): パルスの時間的な位置を変化させることで情報を表現します。レーダーシステムやリモートセンシングなどで、データの整合性が要求される重要なアプリケーションで使用されます。
  1. RF信号発生器における実装と課題

RFアナログ信号発生器でパルス変調を生成する方法はいくつかありますが、基本的な原理はCW(連続波)信号を変調することです。

  • 内部モジュレータ: 高度なRF信号発生器には、内部にパルス変調器が組み込まれており、より高精度で複雑なパルス波形を生成できます。
  • 帯域幅と立ち上がり/立ち下がり時間: パルスの立ち上がり時間と立ち下がり時間が短いほど、広い周波数スペクトルが必要になります。理想的な矩形パルスは無限の帯域幅を持ちます。サイドローブの抑制のためには、意図的に立ち上がり/立ち下がり時間を遅くすることもありますが、これは検出精度とのトレードオフになります。
  • スペクトル純度とノイズ: パルス変調された信号のスペクトル純度(非高調波成分)、ブロードバンドノイズ、SSB位相ノイズは、テスト対象のシステム性能に直接影響するため、低いことが重要です。
  • 同期とタイミング精度: 特にレーダーなどのアプリケーションでは、パルスの正確なタイミングと同期が非常に重要になります。
  1. 応用分野

パルス変調は、以下のような多岐にわたる分野で利用されます。

  • レーダーシステム: ターゲットまでの距離、速度、方向を測定するためにパルス信号が不可欠です。PPMがよく用いられます。
  • 無線通信: デジタルデータの送信にパルス変調の概念が使われます(例:ASK、FSKなど)。
  • 電子戦/アビオニクス: 敵のレーダー妨害や自己防衛システムにおいて、パルス信号の生成・解析が重要です。
  • 医療: 腫瘍治療、不整脈治療、鎮痛などの医療機器にも応用されます。
  • 産業オートメーション/ロボティクス: モーター制御にPDMが広く利用されます。

RFアナログ信号発生器におけるパルス変調のキーポイントは、これらのパルス波形の特性を正確に制御し、目的のアプリケーションに合わせた高品質なパルス信号を生成する能力にあると言えます。