
RFエネルギーハーベスティング(RF-EH: Radio Frequency Energy Harvesting)とは、空気中に存在する微弱な電波(無線周波数信号)のエネルギーを収集し、電力に変換して電子機器の電源として利用する技術です。📡🔋
「環境発電(エネルギーハーベスティング)」の一種であり、主に電池交換や配線が困難な場所にある低消費電力デバイス(IoTセンサーなど)の持続的な動作を可能にするために注目されています。
⚙️ RF-EHの仕組み(レクテナの原理)
RF-EHの核となるのは、「レクテナ(Rectenna: 整流アンテナ)」と呼ばれる複合デバイスです。
構成要素 | 役割 |
アンテナ (Antenna) | 空中を伝搬する電波(RF信号)を受信します。 |
整合回路 (Matching Network) | アンテナと整流回路の間で電力伝送効率を最大化するようにインピーダンス(電気抵抗)を調整します。 |
整流回路 (Rectifier Circuit) | ショットキーダイオードなどの非線形素子(ダイオード)を用いて、アンテナで受信した高周波の交流(AC)電流を、電子機器が利用できる直流(DC)電流に変換します。 |
蓄積ユニット (Energy Storage) | 整流されたDC電力をコンデンサや二次電池などに一時的に蓄え、必要に応じてデバイスに供給します。 |
🎯 RFエネルギー源の種類
RF-EHで利用される電波は、大きく2種類に分けられます。
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環境RF(Ambient RF):
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例: テレビ・ラジオの放送波、携帯電話の基地局(4G/5G)、Wi-Fiルーターなどから放射されている、意図的ではない電波。
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特徴: どこでも存在しますが、その電力密度は非常に低く、得られる電力はμW(マイクロワット)レベルとごくわずかです。
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専用RF(Dedicated RF):
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例: **無線電力伝送(WPT)**のために特別に設置された送信機から、特定の受信機に向けて発射される電波。
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特徴: 意図的にビームを絞ったり、近距離で高出力を送ったりするため、より大きな電力を得られます。
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🌐 応用分野
微弱な電力で動作するデバイスの電源として、幅広い分野での活用が期待されています。
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IoT(Internet of Things):無線センサーノード、スマートタグ、環境モニタリングセンサーなど。電池交換が不要となり、メンテナンスコストが大幅に削減されます。
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ウェアラブルデバイス/生体センサー: 体内に埋め込む医療機器や、装着型のセンサーなど、頻繁な充電・交換が難しい用途。
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RFID(無線ICタグ): リーダーから発せられた電波を電源として動作し、情報を応答する。
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スマートシティ: 遠隔地の監視カメラや道路センサーなど、電源配線が困難な場所での自立電源。
エネルギーハーベスティングは、私たちの身の回りにある振動、熱、光、電波などのエネルギーを拾い集めて発電する技術です。 (13)「どこでも発電」の世界を実現!広がるエネルギーハーベスティング技術という動画は、エネルギーハーベスティング技術全般について解説しており、その中で電磁波の利用(RFエネルギーハーベスティング)にも触れられています。