S/N比(Signal-to-Noise Ratio)とは

~信号の明瞭さ・測定精度を決定づける重要指標~


■ 定義

**S/N比(Signal-to-Noise Ratio)とは、有効な信号成分(Signal)と、妨害となる雑音成分(Noise)との比率を示す指標です。
単位にはデシベル(dB)**が用いられ、数値が大きいほど「信号がノイズに埋もれず、明瞭である」ことを意味します。

S/N(dB)=10log⁡10(信号電力ノイズ電力)\mathrm{S/N}(\mathrm{dB}) = 10 \log_{10} \left( \frac{\text{信号電力}}{\text{ノイズ電力}} \right)


■ S/N比の目安(一般的な解釈)

S/N比(dB) 品質の目安 備考
10~20 dB ノイズがやや目立つ 測定誤差や見落としのリスクあり
30~40 dB 実用レベル 標準的なオーディオ・信号測定用途
50~60 dB 高品質測定レベル 精密計測、RF信号処理など
70 dB以上 非常に高い 高性能ADC、広帯域通信機器向け

■ 測定機器におけるS/N比の意味

測定器 S/N比の意義
✅ オシロスコープ 微小波形の視認性向上、高分解能表示に直結
✅ スペクトラムアナライザ 微弱信号の検出限界に関与(DANLとの関係)
✅ LCRメーター/CV測定器 高感度測定時のデータ信頼性確保
✅ ADC搭載システム S/N比が量子化ビット数(ENOB)に影響

■ 関連する技術用語

用語 説明
ノイズフロア(Noise Floor) 測定系の最低ノイズレベル。これ以下の信号は検出不可
ENOB(有効ビット数) S/N比を基に換算されるA/D変換の実効分解能
DANL(表示平均ノイズレベル) スペアナでのS/N比評価に使われるノイズ基準値
ダイナミックレンジ 最大信号と最小有効信号(ノイズフロア)の比率

■ S/N比を改善する方法

方法 解説
✅ 平均化処理(Averaging) ランダムノイズを抑制し信号成分を強調
✅ 帯域制限(BW Limit) 不要な広帯域ノイズの影響を低減
✅ シールド・グラウンド強化 EMI対策によるノイズ混入防止
✅ 増幅器の適切配置 S/Nを劣化させない前段増幅設計

■ まとめ

項目 内容
定義 信号の強さとノイズの強さの比率(dBで表記)
目的 測定の精度・視認性・通信品質の指標
重要性 精密測定、微小信号観測、高速通信の信頼性に直結
関連機器 オシロスコープ、スペアナ、LCRメーター、ADC搭載製品など
改善策 ノイズ源対策、平均化処理、回路設計の最適化

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