S11特性とは
~高周波信号が入力ポートからどれだけ反射されるかを示すパラメータ~
■ 定義
**S11特性(Scattering Parameter S11)**とは、Sパラメータ(散乱パラメータ)のひとつで、ポート1から入力された信号が同じポート1にどれだけ反射されるかを表す特性です。
簡単に言えば:
S11=反射電圧(ポート1)入力電圧(ポート1)S_{11} = \frac{反射電圧(ポート1)}{入力電圧(ポート1)}
■ 単位と表示
項目 | 内容 |
---|---|
✅ dBスケール(振幅) | -10dB以下であれば比較的整合良好 |
✅ スミスチャート | 複素反射係数(Γ)をリアルタイムに可視化 |
✅ VSWR(電圧定在波比) に換算可能 | インピーダンス整合評価に応用される |
■ 意味と重要性
S11は整合性(マッチング)の良し悪しを表します。以下のような読み替えが可能です:
S11値 | 意味 | 解釈 |
---|---|---|
0 dB | 全反射 | 負荷なし(オープン)または短絡状態 |
−10 dB | 一部反射 | 入力信号の約10%が反射(整合がやや悪い) |
−20 dB | 良好整合 | 約1%以下しか反射されない |
−∞ dB | 完全整合 | 理論上、全て信号が吸収される(現実には不可) |
■ 測定例:アンテナのS11特性
-
指定帯域でS11が −10dB以下 → 「その周波数帯で整合が取れており、電力が放射されやすい」
-
複数周波数でS11が上昇 → 帯域外(放射できない、または損失が多い)
■ 測定機器
測定器 | 特徴 |
---|---|
✅ ベクトルネットワークアナライザ(VNA) | S11を複素数で高精度測定(振幅・位相) |
✅ スカラーネットワークアナライザ(SNA) | S11のdB値のみ簡易測定可能 |
✅ スミスチャート表示対応機器 | リアルタイムで整合状態を可視化可能 |
■ S11と関連用語の関係
パラメータ | 意味 | 備考 |
---|---|---|
S11 | 入力信号の反射特性 | dBスケールで表示 |
反射係数(Γ) | S11と同義 | 複素数で表現 |
VSWR | 整合の指標 | S11から算出可能 |
Return Loss | 反射損失 = −S11 | dB表現で使われる |
■ まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
S11とは? | 入力ポートに戻ってくる信号の割合(反射) |
目的 | インピーダンス整合の評価、エネルギーロス最小化 |
理想値 | −20 dB以下(高性能アンテナや整合器) |
表示形式 | dBスケール、スミスチャート、VSWR換算 |
使用機器 | VNA、SNA、スミスチャート解析ツールなど |
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