S21特性とは

~高周波信号がポート1からポート2へ伝送される度合いを示すパラメータ~


■ 定義

S21特性とは、**Sパラメータ(散乱パラメータ)のひとつで、
ポート1から入力された信号がポート2からどれだけ出力されるか(伝送特性)**を表します。

数式的には:

S21=出力電圧(ポート2)入力電圧(ポート1)S_{21} = \frac{出力電圧(ポート2)}{入力電圧(ポート1)}

周波数領域で定義され、複素数(振幅 + 位相)で表現されます。


■ 単位と表示

種類 内容
✅ dBスケール(振幅) |S21| を対数変換し、信号の減衰や増幅を表す
✅ 位相スケール(°) 信号がポート1→2間でどれだけ遅延したか(時間軸のずれ)を示す

■ 代表的な意味と用途

用途 意味
✅ 伝送損失(Insertion Loss) 信号が減衰している場合、S21は0dB以下
✅ 増幅特性(Gain) アンプなどで信号が増幅された場合、S21は0dB以上
✅ フィルタの通過帯域評価 通過帯域でS21 ≒ 0dB、遮断帯域で大きく低下(−40dB以下など)
✅ 共振器・アンテナ評価 共振点でピークが現れる(例:S21が急激に上昇)
✅ 差動伝送路の伝送効率 PCBの信号整合性解析にもS21が使われる

■ 実例:ローパスフィルタのS21グラフ(dB表示)

diff
| 0dB ─────────────┐ ←通過帯域 │       ↓ -20dB ────────┐    ←遮断帯域↓ -40dB ────────┘ └─┬─┬─┬─┬─┘ f1 f2 f3 f4 f5 → 周波数軸(対数)

■ 測定機器

測定器 特徴
✅ ベクトルネットワークアナライザ(VNA) S21を含むすべてのSパラ(S11, S21, S12, S22)を高精度に測定
✅ スペクトラムアナライザ + トラッキングジェネレータ 振幅のみの簡易S21測定が可能(位相は不可)
✅ スカラーネットワークアナライザ(SNA) dBゲイン/減衰の測定に特化した簡易装置

■ S21と他のSパラの関係

パラメータ 意味
S11 入力ポートでの反射(反射係数、VSWR)
S21 入力→出力の伝送特性(通過/損失)
S12 出力→入力の逆方向伝送特性(アイソレーション)
S22 出力ポートでの反射特性(負荷整合性)

■ まとめ

項目 内容
S21とは? 高周波信号が入力(ポート1)から出力(ポート2)へ伝送される割合
単位 振幅(dB)と位相(°)
主な用途 フィルタ、アンプ、アンテナ、伝送路の周波数特性評価
使用機器 VNA、SNA、スペアナ+TGなど
利点 信号の「どれだけ通るか」を定量評価可能、整合性・品質管理に不可欠

T&Mコーポレーションでは、S21特性の高精度な測定が可能なベクトルネットワークアナライザ(VNA)や、簡易的なトラッキング付きスペクトラムアナライザを取り揃えており、測定ソフトやSパラ表示支援もご提供可能です。お気軽にご相談ください。