
「トリプルバンドマイクロストリップアンテナ」は、3つの異なる周波数帯で同時に(または選択的に)動作するように設計されたマイクロストリップアンテナ(パッチアンテナ)のことです。
これが5Gの分野で重要になるのは、5G通信が複数の周波数帯(Sub-6やミリ波など)を利用してサービスを提供しているからです。
📌 5Gにおける役割と利点
5Gネットワークは、以下のような複数の帯域を組み合わせて構成されています。
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低周波数帯/Sub-6帯(3.7 GHz、4.5 GHz帯など):
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広いカバレッジ(通信範囲)と浸透性を提供。
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ミリ波帯(28 GHz帯、39 GHz帯など):
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超高速・大容量通信を実現しますが、カバレッジが狭く、遮蔽物に弱い特性があります。
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トリプルバンドアンテナの利点
トリプルバンドマイクロストリップアンテナは、これらの異なる特性を持つ複数の周波数帯を単一の小型アンテナでカバーするために開発されています。
特徴 | 利点 |
マルチバンド対応 | 1つのアンテナで3つの周波数帯(例:既存の4G帯域、5GのSub-6帯域、5Gのミリ波帯域など)に対応できる。 |
小型化・省スペース | 複数のアンテナを搭載する代わりに、単一のアンテナで済むため、スマートフォンやIoTデバイス、基地局装置の小型化に貢献する。 |
低コスト化 | 製造プロセスがシンプルになり、アンテナの部品点数を減らせる。 |
⚙️ 構造と設計技術
マイクロストリップアンテナは、誘電体基板上に金属のパッチ(放射素子)を配置し、その下にグラウンドプレーン(接地板)を持つ平面的なアンテナです。
トリプルバンドを実現するためには、主に以下のような技術が用いられます。
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パッチ形状の工夫(スロット・切込み):
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パッチの内部にスロット(溝)を入れたり、特定の形状に切り込みを入れたりすることで、共振周波数を変化させ、複数の共振点を作り出します。例えば、H字型、E字型、または複数のパッチを組み合わせた構造などが研究されています。
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積層構造(スタックドパッチ):
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異なるサイズのパッチを誘電体層を挟んで重ねることで、それぞれのパッチを異なる周波数で共振させます。
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DGS (Defected Ground Structure):
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グラウンドプレーンに意図的にパターンやスロットを設けることで、アンテナの電気的特性(共振周波数や帯域幅など)を調整し、マルチバンド化を達成します。
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この種のアンテナは、高利得・高効率が求められる5Gのミリ波帯においても、小型化とマルチバンド対応を両立させる上で重要な技術となっています。
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