U-Slot Patch Antenna(Uスロット・パッチアンテナ)とは、マイクロストリップアンテナ(パッチアンテナ)の放射素子(パッチ)の中央部分に、U字型(またはコの字型)の切り込み(スロット)を入れたアンテナ構造です。📡
このUスロットの導入は、従来の標準的なパッチアンテナが持つ極めて狭い帯域幅(ナローバンド特性)という欠点を改善し、広帯域化を図ることを主な目的としています。
⚙️ 構造と動作原理
1. 構造
基本的なパッチアンテナは、誘電体基板の上に金属パッチを配置し、その下にグランドプレーン(接地板)を設けた平面構造をしています。
Uスロット・パッチアンテナでは、このパッチ部分にU字型の切り込みを設けます。
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Uスロットの役割: Uスロットは、パッチ上に共振電流の経路を長くする効果を生み出します。
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共振周波数: パッチアンテナの共振周波数は、パッチの物理的な寸法で決まりますが、Uスロットを設けることで、2つの異なる共振モードを近接させることができます。
2. 広帯域化の原理
パッチアンテナは本質的に共振器として動作するため、帯域幅が狭くなります。Uスロットは、以下の原理で帯域幅を広げます。
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二重共振の生成: Uスロットの長さと幅を適切に設計することで、パッチの基本共振(元のパッチサイズによる共振)と、スロットの周辺を流れる電流によって生じる新しい共振モード(スロットによる共振)を発生させます。
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共振の結合: これらの2つの共振周波数(
と
)を意図的に近くに配置・結合させることで、アンテナの反射係数(S11)が低い状態を広い周波数範囲で維持できるようになり、結果として動作帯域が大幅に拡大されます。
📈 利点と応用
利点
| 特徴 | 説明 |
| 広帯域化 | 従来のパッチアンテナに比べ、2倍以上の帯域幅を実現することが可能です。 |
| 低プロファイル | パッチアンテナの基本的な利点である薄型・軽量な構造を維持できます。 |
| 共振周波数の調整 | Uスロットの形状(長さ、幅、位置)を変えることで、共振周波数や帯域幅を比較的自由に調整できます。 |
| シンプルな構造 | 複雑な多層構造や寄生素子(スタック)を用いることなく、広帯域化を実現できます。 |
応用分野
Uスロット・パッチアンテナは、その広帯域性と平面性から、以下の分野で広く利用されています。
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Wi-Fi / WLAN:広範囲のチャネルをカバーする必要がある無線LANシステム。
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GPS/GNSS:複数の周波数帯域を受信する必要がある測位システム。
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携帯電話通信(3G/4G/5G):広いサービス帯域をサポートする基地局や端末アンテナ。
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広帯域レーダー:広い周波数範囲での動作が求められるシステム。
こちらの資料では、「U-Slot Patch Antenna」について詳しく解説されています。
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https://arxiv.org/pdf/1906.00252
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