VNA(ベクトルネットワークアナライザ)の使い方

 

VNA(Vector Network Analyzer/ベクトルネットワークアナライザ)は、高周波回路やアンテナ、フィルタなどの**伝送特性(Sパラメータ)を測定するための重要な計測器です。主にS11(反射)S21(通過)**といったパラメータを測定することで、機器や回路の特性を可視化します。


1. 基本構成と接続

VNAには通常、**ポート1(送信)ポート2(受信)**があり、DUT(被測定デバイス)に接続して使用します。

測定例:

測定内容 接続方法
S11(反射) ポート1 → DUT(片端接続)
S21(通過) ポート1 → DUT → ポート2

2. キャリブレーション(校正)

VNA測定で最も重要なステップが**キャリブレーション(CAL)**です。誤差を最小限に抑え、正確な測定結果を得るために行います。

主な校正方法:

  • オープン(Open):端子を開放状態にする

  • ショート(Short):端子を短絡状態にする

  • ロード(Load):50Ωの終端を接続

  • スルー(Thru):2つのポートを直結する(S21用)

※キャリブレーションキットを使い、VNA本体のウィザードに従って校正を行います。


3. 測定パラメータと設定

以下のパラメータを目的に応じて設定します:

設定項目 内容
周波数範囲 測定対象の特性が現れる周波数帯(例:100kHz~3GHz)
ポイント数 測定する周波数の分解能。多いほど滑らかなグラフになりますが、測定時間が増加します。
スイープタイプ リニア/ログなどの周波数分布
IF帯域幅(IFBW) フィルタ幅。小さいとノイズが少ないが測定時間が増えます。

4. 測定結果の確認

VNAの画面には、以下のような測定結果がグラフで表示されます:

  • S11(反射係数/リターンロス):インピーダンス整合の状態を評価

  • S21(挿入損失/ゲイン):信号がどれだけ通過したかを評価

  • スミスチャート:複素インピーダンスの可視化に便利


5. 応用測定の例

測定対象 測定内容
アンテナ インピーダンス整合、反射特性(S11)
フィルタ 通過帯域・遮断特性(S21)
アンプ ゲイン・リターンロス・安定性解析
ケーブル 損失・不整合・長さの測定(TDR機能搭載機の場合)

6. 測定結果の保存とレポート作成

多くのVNAでは、CSV形式でデータ保存したり、画面キャプチャをUSBに保存できます。測定結果をExcelやレポートにまとめる際に便利です。


まとめ

VNAは高周波測定において非常に強力なツールですが、正確な測定にはキャリブレーションが不可欠です。まずは基本操作を習得し、アンテナやフィルタの測定から始めるのがおすすめです。


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