
VNA(ベクトルネットワークアナライザ)の校正におけるSOLT、SOLR、SSLT、SSST、TRM、TRLなどは、それぞれ異なる校正方法の略称です。これらの校正方法は、VNAが正確な測定を行うために、測定系の誤差を取り除くために用いられます。
SOLT (Short-Open-Load-Thru) または TOSM(Through、Open、Short、Match)
- 概要:4つの標準器(ショート、オープン、ロード、スルー)を用いて行う最も一般的な校正方法です。
- 特徴:比較的簡単な手順で高精度な校正が可能です。
- 使用例:同軸ケーブルやコネクタの特性評価など、幅広い用途で利用されます。
- メーカーによって呼び名が異なりますが同じ校正方法です(Load=Match)
- 1 path 2 ports校正によりS11,S21の測定、full 2 port校正によりS11,S21,S12,S22の測定が可能です
SOLR (Short-Open-Load-Reflect)
- 概要:ショート、オープン、ロードに加え、反射器(リフレクタ)を校正標準器として用います。
- 特徴:SOLTよりも高精度な校正が可能です。
- 使用例:より高精度な測定が要求される場合や、特定の周波数帯域での測定に利用されます。
SSLT (Single-Step-Load-Thru)
- 概要:ショート、スルー、ロードの3つの標準器を用いて校正を行います。
- 特徴:SOLTよりも標準器の種類が少ないため、校正作業が簡略化できます。
- 使用例:比較的簡略な校正で十分な場合や、校正器の制約がある場合に使用されます。
SSST (Single-Step-Short-Thru)
- 概要:ショートとスルーの2つの標準器のみを用いて校正を行います。
- 特徴:校正作業が最も簡略化できますが、精度は他の方法に比べて劣ります。
- 使用例:簡易的な測定や、おおよその特性把握が必要な場合に使用されます。
TRM (Thru-Reflect-Match)
- 概要:スルー、反射器、整合負荷(マッチドロード)の3つの標準器を用いて校正を行います。
- 特徴:非TEMモードの伝送線路(導波管など)における校正に適しています。
- 使用例:非TEMモードの伝送線路の特性評価や、高周波回路の校正に利用されます。
TRL校正 (Through-Reflect-Line)
スルー、反射器、ラインの3つの標準器を用いて校正を行います。非TEMモードの伝送線路の校正に適しており、TRM校正の一種とみなされることもあります。
TRL校正は、長さの異なる2本の伝送線路(Line)と、開放または短絡された反射器(Reflect)と、2つの伝送線路を直接接続したスルー線路(Thru)の3種類の基準デバイスを使用して校正を行います。
LRL校正 (Line-Reflect-Line)
ライン、反射器、ラインの3つの標準器を用いて校正を行います。TRL校正と同様に、非TEMモードの伝送線路の校正に適しています。
LRL校正は、長さの異なる2本の伝送線路(Line)と、開放または短絡された反射器(Reflect)の3種類の基準デバイスを使用しますが、スルー線路の代わりに、2本の伝送線路を直接接続した状態を測定します。この時、2本の伝送線路の長さが異なるため、LRL校正では、伝送線路の特性を正確に把握する必要があります。
補足
- これらの校正方法は、VNAの機種や測定対象、測定目的に応じて選択する必要があります。
- 校正の精度は、使用する標準器の精度や、校正手順に大きく影響されます。
- 校正の際には、各標準器の特性を正確に把握し、適切な手順で校正を行う必要があります。
参考
- SIGLENT(シグレント) SEM5000Aシリーズの電子校正(ECal)モジュールの紹介(動画)
https://tm-co.co.jp/product-video/siglent-ecal-sem5000a/
以上