高周波ベクトル信号発生器は、無線通信やレーダーなどの分野で、様々な変調方式に対応した高周波信号を生成するための重要な測定器です。CWまたはAM,FM変調のアナログ信号発生器とは異なり、デジタル変調された信号(I/Q信号)を正確に生成できる点が大きな特徴です。
特徴
- 高周波対応: 数GHzから数十GHz、さらにはミリ波帯(100GHz以上)まで対応できる製品があります。5GやBeyond 5G、6Gといった次世代通信技術の開発・評価に不可欠です。
- 広帯域変調: 最新の通信規格に対応するため、数百MHzから数GHzといった広い変調帯域幅を持つことが求められます。これにより、MIMOやビームフォーミングといった技術に必要な広帯域信号を生成できます。
- 高い信号品質:
- 低位相ノイズ: 信号の揺らぎが少なく、安定した信号を供給できます。
- 低EVM (Error Vector Magnitude): デジタル変調された信号の品質を示す指標で、EVMが低いほど、理想的な信号に近い高精度な信号を生成できます。
- 高ACLR (隣接チャネル漏洩電力比): 目的の信号が隣接するチャネルに漏洩する度合いが低いことを示し、無線通信システムにおける干渉を抑制できます。
- 多機能性:
- 多様な変調方式に対応: 5G NR、LTE、W-CDMA、GSM、Wi-Fi (IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax) など、様々なデジタル変調方式に対応した波形生成が可能です。
- ベースバンド信号生成: 内部にベースバンド信号発生器を内蔵しており、複雑なデジタル変調波形を生成できます。
- 多チャンネル/多ポート: MIMOやビームフォーミングの評価のために、複数のRF出力を備える製品や、複数台を同期させて使用できる製品もあります。
- 高速切り替え: 周波数や振幅の切り替え速度が高速であるため、生産ラインでの試験効率向上に貢献します。
- 高出力電力: 経路損失を補償したり、DUT (被測定デバイス) に必要な信号レベルを供給するために、高出力のオプションを持つ製品もあります。
用途
高周波ベクトル信号発生器は、主に以下のような分野で用いられます。
- 無線通信機器の研究開発: 5G/6G基地局、スマートフォン、IoTデバイスなどの開発において、各種通信規格に準拠したテスト信号を生成し、送受信機の性能評価を行います。
- 無線通信機器の製造試験: 生産ラインにおいて、大量生産される無線機器の品質管理や性能試験を行います。
- レーダー/電子戦: Aerospace & Defense 、レーダーシステムの開発や評価、電子戦における妨害信号の生成など。
- 衛星通信: 衛星通信機器の試験やGNSS (全地球航法衛星システム) 受信機の評価。
- コンポーネント/モジュール評価: RFIC、アンプ、フィルタなどの高周波部品の特性評価。
- EMI/EMC試験: 電磁波干渉 (EMI) や電磁両立性 (EMC) 試験における信号源として。
主要メーカー
弊社取り扱いの高周波ベクトル信号発生器の主要なメーカーとしては、以下の企業が挙げられます。
- Ceyear (シーヤー): 幅広い周波数帯域と高性能なベクトル信号発生器を提供しています。エクステンダーなしで110GHzのベクトル信号発生器をリリースしている唯一のメーカーです。
- SIGLENT (シグレント): 低価格、高品質な信号発生器で知られており、最新の通信規格に対応した製品を多数ラインアップしています。現在40GHzまでの製品をラインアップしています。
T&Mコーポレーションでは、SIGLENT、CEYEARなど各社のRF信号発生器を取り扱い、教育用途から先端通信分野まで、最適なソリューションをご提案しています。デモ機貸出や用途相談も随時承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。