Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)は、最大46Gbpsという超高速通信を実現するために、320MHzの広帯域利用や4096-QAMといった高度な変調方式を採用しています。

しかし、通信が高速・高周波数化するほど、**「高調波(Harmonics)」**による干渉が大きな課題となります。高調波とは、送信したい信号(基本波)の整数倍の周波数で発生する不要な電波のことで、これが他の通信帯域や自らの受信感度を阻害します。

Wi-Fi 7における主な高調波抑制技術とアプローチについて解説します。


1. パンクチャリング技術(Preamble Puncturing)

Wi-Fi 7で最も特徴的な抑制・回避技術の一つです。

従来の規格では、帯域内に一部でも干渉(高調波や他の電波)がある場合、そのチャンネル全体を使えないか、狭い帯域に落とす必要がありました。

  • 仕組み: 320MHzの帯域の中にノイズや干渉がある特定の部分だけを「切り抜く(パンクチャリング)」ことで、残りのクリーンな帯域を無駄なく使用します。

  • 効果: 高調波によるピンポイントな干渉を物理的に避けることができ、実効スループットを維持します。


2. 高精度なフィルタリング技術(BAW/SAWフィルタ)

物理的なハードウェアレベルでの抑制策です。

Wi-Fi 7は2.4GHz、5GHz、6GHzの3つのバンドを使用しますが、それぞれの帯域が近接しているため、高調波が隣接バンドに漏れ出す「相互干渉」が起こりやすくなります。

  • BAW(弾性表面波)フィルタ: 高周波帯(5GHz/6GHz)において非常に急峻な遮断特性を持ちます。送信機から出る不要な高調波を、アンテナから放出される前に急激に減衰させます。

  • 設計の最適化: Wi-Fi 7対応のRFフロントエンドモジュールでは、高調波の発生源となるパワーアンプ(PA)の非線形性を抑える設計が強化されています。


3. デジタル事前歪み補正(DPD: Digital Pre-Distortion)

信号を送信する前に、あらかじめ「逆特性」の歪みを加えておく信号処理技術です。

  • 仕組み: 増幅器(アンプ)を通すと信号は必ず歪み、それが高調波の原因となります。DPDは、あらかじめデジタル処理でその歪みを打ち消すように計算された信号を生成します。

  • Wi-Fi 7での重要性: 4096-QAMという極めて繊細な変調方式では、わずかな歪みがエラーに直結するため、DPDによる高調波・歪み抑制の精度がこれまで以上に求められます。


4. 複数リソースユニット(Multi-RU)による制御

Wi-Fi 6までは1ユーザーに1つのリソースユニット(RU)しか割り当てられませんでしたが、Wi-Fi 7では1ユーザーに複数のRUを割り当てられます。

  • 抑制への貢献: 干渉や高調波の影響を受けている特定の周波数スロットを避け、クリーンなスロットだけを組み合わせて通信することで、ノイズの影響を最小限に留めます。


まとめ:なぜWi-Fi 7で抑制が重要なのか?

課題 影響 Wi-Fi 7の対策
広帯域化 (320MHz) ノイズを拾う確率が増大 パンクチャリングで回避
4096-QAM わずかな歪みで通信不能 DPDによる高精度補正
多バンド併用 2.4/5/6GHz間での相互干渉 高性能フィルタ (BAW)

Wi-Fi 7の高調波抑制は、単に「出さない」だけでなく、デジタル処理で「打ち消す」、ネットワーク制御で「避ける」という多層的なアプローチで成り立っています。


 

 

 

 

 

 

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  • Wi-Fi 7 (IEEE 802.11be)とは

    Wi-Fi 7 (IEEE 802.11be) は、Wi-Fi 6/6Eの後継となる次世代のWi-Fi規格で、「Extremely High Throughput (EHT)」という名称が示す通り、超高速・低遅延の通信を実現することを目的としています。 その主な特徴は以下の通りです。   1. 超高速通信   320MHzのチャネル帯域幅: Wi-Fi 6/6Eの最大160MH[…]

 

 

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