―「見えている波形」を正しく理解するために―

オシロスコープは、電圧を「時間軸で可視化」できる非常に強力な測定器です。
一方で、電流については「直接見えにくい」ため、電圧と電流の関係を正しく理解していないと、波形を誤解してしまいます。

本記事では、オシロスコープで観測される電圧波形から、電流の振る舞いをどう読み取るかを工程視点で解説します。

 

オシロスコープは何を測っているのか

オシロスコープが直接測定している量は、電圧(V)です。

オシロスコープの入力端子は、信号点と基準点(GND)との間の電位差を測定しています。

つまり、画面に表示されている波形は、「その点の電圧が時間とともにどう変化しているか」を示しています。


電流はなぜ直接見えないのか

電流は、回路を流れる電子の移動量であり、電圧のように「点」で定義される量ではありません。

電流は「経路」に対して定義されるため、オシロスコープ単体では直接測定できません。

そのため、電流を知りたい場合は、
・抵抗に生じる電圧降下を見る
・電流プローブを使用する

といった方法が必要になります。


抵抗を使って電流を読み取る基本原理

最も基本的な方法は、抵抗にかかる電圧をオシロスコープで測定することです。

抵抗では、次の関係が成り立ちます。

電圧 V = 電流 I × 抵抗 R

この関係(オームの法則)を用いれば、電圧波形から電流波形を推定できます。


オシロスコープで見る抵抗両端の波形

抵抗の両端にプローブを当てて電圧を測定すると、表示される波形は「電流に比例した波形」になります。

つまり、・電圧波形の形= 電流波形の形となります。

このため、抵抗を用いた電流観測は、オシロスコープ測定において非常に基本的かつ重要です。


交流回路における電圧と電流の関係

交流回路では、電圧と電流の「大きさ」だけでなく、**位相(タイミングのずれ)**が重要になります。

オシロスコープでは、この位相関係を視覚的に確認できます。


抵抗回路における電圧と電流

純粋な抵抗回路では、
・電圧と電流は同位相
・波形の山と谷が同じタイミング

になります。

オシロスコープ上でも、電圧波形と電流(換算)波形は重なって見えます。


 

コイル(インダクタ)を含む回路の場合

コイルを含む回路では、電流は電圧より遅れるという特性があります。

オシロスコープで観測すると、電圧波形が先に変化し、それに追従する形で電流が変化します。

これは、コイルが「電流の変化を妨げる性質」を持つためです。


コンデンサを含む回路の場合

コンデンサを含む回路では、・電流は電圧より先行するという挙動を示します。

オシロスコープ上では、電流のピークが電圧のピークより先に現れます。

この特性は、突入電流やスイッチングノイズの評価で特に重要です。


位相差をオシロスコープで確認する方法

電圧と電流の位相差は、

・2チャンネル同時表示
・時間差(Δt)測定

によって確認できます。

周期 T に対する時間差 Δt から、位相差は次のように求められます。

位相差[°]=(Δt / T)× 360


電流プローブを使った直接観測

より正確に電流を測定したい場合は、電流プローブを使用します。

電流プローブを使えば、

・電圧波形と電流波形を同時に表示
・スイッチング動作の詳細確認
・突入電流やリップル評価

が可能になります。


オシロスコープ測定でよくある誤解

電圧波形だけを見て電流も同じだと思い込む
プローブのGND位置を意識していない
AC/DCカップリングの違いを理解していない
位相差を「ずれ」として感覚的に判断してしまう

これらは、測定解釈ミスの典型例です。


T&M視点での測定実務ポイント

オシロスコープ測定では、次を意識してください。

・「見ているのは電圧」であることを常に意識する
・電流は必ず換算条件を明確にする
・回路構成(R/L/C)を理解した上で波形を見る
・必要に応じて電流プローブを使う


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