― レンツの法則とファラデーの法則を工程視点で捉える ―

 

スイッチング電源や高速デジタル回路を時間ドメインで観測すると、電圧スパイクやリンギングといった現象が顕著に現れます。
これらは単なる「波形の乱れ」ではなく、電磁誘導に起因する必然的な現象です。
その理解に不可欠なのが、ファラデーの法則レンツの法則です。

 

ファラデーの法則とは何を示しているのか

ファラデーの電磁誘導の法則は、次のように表現されます。

誘導起電力(EMF)は、回路を貫く磁束の時間変化に比例する

これは回路理論というより、時間変化する磁界が電圧を生み出すという電磁界の法則です。

つまり、

・電流が変化する
・磁界が変化する
・その結果、電圧が発生する

という因果関係が成立しています。



レンツの法則が示す「向き」の意味

レンツの法則は、誘導起電力の**向き(符号)**を決める法則です。

誘導される電圧・電流は、もとの磁束変化を打ち消す方向に生じます。

この性質により、

・電流の急激な変化が抑えられる
・エネルギーが保存される

という振る舞いが生まれます。

スイッチング回路で観測される電圧の跳ね返りやリンギングは、まさにこの法則の時間ドメインでの現れです。



電磁誘導は「交流」だけの現象ではない

ファラデーの法則は、直流・交流という区別ではなく、

時間的に変化する現象すべてに適用されます。

スイッチング電源では、

・オン/オフの瞬間
・電流の立ち上がり、立ち下がり

が極めて短時間で発生します。

この「時間変化」が、強い誘導電圧やノイズを生み出します。

 

時間ドメインで見ると何が分かるのか

時間ドメインで波形を見ることで、

・どの瞬間に磁束が急変しているか
・どのエッジで誘導電圧が発生しているか
・どの配線・部品が影響を受けているか

を直接確認できます。

これは周波数ドメインだけでは把握できない情報です。

 

回路図では見えない「電磁エネルギーの流れ」

重要なのは、誘導現象は回路図の中だけで完結していないという点です。

磁界は空間に広がり、誘導電圧は配線形状やリターン経路に強く依存します。

そのため、

・配線のループ面積
・GNDパターンの連続性
・測定プローブの取り回し

が、時間ドメインノイズの大きさを左右します。

 

工程視点での理解(T&M視点)

時間ドメインでノイズを見る際は、
次のように考えることが重要です。

・電圧スパイクは「磁束変化の結果」である
・ノイズは回路ではなく空間で発生している場合がある
・誘導は必ず変化を打ち消す方向に現れる

この視点を持つことで、「なぜここでノイズが出るのか」を物理的に説明できるようになります。



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