― オシロスコープで「ノイズの正体」を捉える考え方 ―
ノイズ評価というと、スペクトラムアナライザで周波数ドメインを見る、というイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし実務では、まず時間ドメインでノイズを見ることが、問題解決への最短ルートになるケースが非常に多くあります。
本記事では、「時間ドメインでノイズを見る」とは具体的にどういうことなのかを、オシロスコープ測定を軸に工程視点で解説します。
時間ドメインとは何を見ているのか
時間ドメインとは、信号やノイズが時間とともにどのように発生・変化しているかを見る視点です。
オシロスコープの画面に表示される波形は、すべて時間ドメインの情報です。
つまり、
・いつノイズが発生しているのか
・どのタイミングで大きくなるのか
・周期性があるのか、突発的なのか
といったことを直接確認できます。
ノイズは「常に出ている」とは限らない
時間ドメインでノイズを見る最大の利点は、ノイズの発生タイミングが分かることです。
実際の回路では、
・スイッチングの瞬間だけ発生するノイズ
・特定のエッジでのみ現れるスパイク
・負荷変動時にだけ出る異常波形
といったように、ノイズは「常時存在」ではなく特定の条件・瞬間で発生していることがほとんどです。
スイッチングエッジとノイズの関係
スイッチング電源や高速デジタル回路では、ノイズの多くが 立ち上がり・立ち下がりエッジに集中しています。
時間ドメインで見ると、
・急峻な電圧変化
・リンギング
・オーバーシュート/アンダーシュート
として現れます。
これらはすべて、後に周波数ドメインでは「高周波ノイズ成分」として現れるものです。
時間ドメインでしか分からない情報
周波数ドメインでは、・どの周波数成分が強いか は分かりますが、
・いつ発生しているか ・どの信号に同期しているかは分かりません。
時間ドメインでは、
・スイッチング素子のオン/オフ
・クロックエッジ
・制御信号の切り替え
とノイズを時間的に対応付けて確認できます。
トリガを使ったノイズ観測
時間ドメインでノイズを捉えるには、オシロスコープの トリガ設定 が非常に重要です。
代表的な方法としては、
・エッジトリガ
・グリッチトリガ
・パルス幅トリガ
などがあります。
これにより、・まれにしか出ない異常ノイズ ・特定条件でのみ発生するスパイク
を安定して観測できるようになります。
ノイズの「大きさ」だけを見てはいけない理由
時間ドメインで重要なのは、ノイズのピーク電圧だけではありません。
同時に、
・立ち上がりの速さ
・振動の減衰時間
・繰り返し周期
を見る必要があります。
ピークが小さくても、非常に急峻なエッジを持つノイズはEMI や誤動作の原因になり得ます。
プローブと測定系の影響
時間ドメインでのノイズ観測では、測定系そのものがノイズを作り出すことがあります。
注意すべき点は、
・プローブの帯域不足
・長い GND リード
・不適切な接地方法
これらは、
実際には存在しないリンギングやスパイクを
「見せてしまう」原因になります。
時間ドメインでノイズを見る実務的手順(T&M視点)
実務では、次の流れを推奨します。
まず時間ドメインで波形を観測する
ノイズが出るタイミングを特定する
どの信号・動作に同期しているかを確認する
その後、周波数ドメインで成分を分析する
この順序により、原因不明のノイズを効率的に切り分けできます。
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