
― 波形データ・設定情報の保存・呼び出し・活用ノウハウ ―
本章では、TH2883Sシリーズに搭載されている内部ファイルシステムとUSBメモリの活用方法について解説します。波形データ、測定設定、統計情報などの保存と管理方法を理解することで、試験結果のトレーサビリティ確保や再測定の効率化が図れます。
1. ファイル管理の基礎
TH2883Sシリーズは、以下2つの保存領域をサポートしています:
種類 | 特徴 | 主な用途 |
内部メモリ(Internal) | 本体内に保存 | 頻繁に使用する設定や波形 |
USBメモリ(External) | USB端子に接続して利用 | 長期保存や他装置への移行に適する |
2. ファイル管理画面の構成
[SETUP]キーを複数回押下すると以下の画面に切り替わります:
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Int. File(内部ファイル操作)
-
Ext. File(USBファイル操作)
画面内の主な項目:
ソフトキー名 | 説明 |
Save | 測定条件・標準波形を保存 |
Load | 保存済みファイルを読み出して実行 |
Del | 選択ファイルを削除 |
Rename | ファイル名の変更 |
Dir | サブフォルダ表示(外部USB時) |
Back | 前フォルダに戻る(USB時) |
3. ファイル保存時の形式
ファイル種類 | 拡張子 | 内容 |
設定ファイル | .setup |
各測定ステップの条件設定 |
標準波形ファイル | .std |
比較用波形データ(複数点の平均) |
測定波形データ | .csv or .bin |
実波形データ(波形1波分) |
画面キャプチャ | .bmp |
表示波形の画像(USB保存時のみ) |
統計データ | .txt or .csv |
測定回数やPASS率のログ情報 |
4. ファイル名の命名ルールと管理
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最大32文字まで、英数字/アンダースコア(_)のみ使用可能
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空白・記号(#, *, &, @など)は使用不可
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ファイル名重複時は上書き確認あり
📌 例:
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WINDING_STD01.setup
:巻線コイル用標準設定 -
CORONA_TEST.std
:コロナ検出用波形基準
5. USBメモリの使用方法
5.1 接続手順
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前面USBホスト端子にUSBを差し込む
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ディスプレイ右上にUSBアイコンが点灯すれば認識成功
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[SETUP] → Ext. Fileを選択
5.2 注意点
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USBメモリはFAT32形式に対応(NTFS不可)
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フォルダ構造に対応しており、カテゴリ別に管理可能
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挿抜時は必ずアイドル状態で行うこと(測定中はNG)
6. ファイルの実用活用例
活用シーン | 方法 |
製品別の測定設定管理 | 型番ごとに.setup を作成して分類保存 |
波形の長期保存 | .std ファイルや.bmp でUSBに保存 |
不良解析 | .csv で波形データをPCに取り込み、ExcelやPythonで解析 |
報告書作成 | 測定画面のスクリーンショットを取得し、Wordへ貼付 |
社内共有 | 設定ファイルをUSBで他装置へコピー、同一条件で試験可 |
7. COPYキー機能
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前面パネルの[COPY]キーを押すと、現在表示中の画面をUSBメモリへ
.bmp
形式で保存 -
保存先:USBルート直下、ファイル名は自動命名(例:
Copy0001.bmp
)
8. ファイル管理に関する注意事項
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内部メモリ容量には限りがあるため、定期的なUSBへのバックアップを推奨
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USB保存時はファイル破損を防ぐため、安全な取り外しを徹底
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他機種との互換性は保証されないため、機種ごとの保存形式を確認すること
まとめ
TH2883Sシリーズは、柔軟なファイル管理機能により、多種多様な測定条件・データの保存/呼び出しを簡単に行うことができます。USBとの併用により、作業の属人化を防ぎ、試験の標準化・効率化を強力に支援します。
インパルス巻線試験器の入門①- 試験原理・構成・基本仕様の理解
インパルス巻線試験器の入門②-主要仕様と波形比較手法の解説
インパルス巻線試験器の入門③-測定表示とディスプレイ機能
インパルス巻線試験器の入門④-比較方式と判定アルゴリズム
インパルス巻線試験器の入門⑤-測定設定と試験ステップの構成(SETUP)
インパルス巻線試験器の入門⑥-システム設定と通信インターフェースの管理
インパルス巻線試験器の入門⑦-操作手順と標準波形の作成
インパルス巻線試験器の入門⑧-リモート制御用コマンドとSCPI準拠インターフェース
インパルス巻線試験器の入門⑨-ファイル管理とUSB/内部メモリ活用法
インパルス巻線試験器の入門⑩-インパルス試験の応用と実践的トラブル対応例