
XコンデンサとYコンデンサは、EMC(電磁両立性)対策において、電源ラインのノイズフィルタリングに不可欠な部品です。それぞれの特徴と役割、EMC対策における考え方を以下にまとめます。
Xコンデンサ(ライン間コンデンサ)
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役割: 主にディファレンシャルモードノイズを除去します。
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動作原理: 電源ライン(L-N間)に接続され、ノイズ成分をショートさせ、平滑化する役割を担います。
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特徴:
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大きな静電容量を持つことが可能です。
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故障した場合、短絡(ショート)モードになるように設計されています。これにより、ヒューズを溶断させ、火災や感電のリスクを防ぎます。
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電源を切った後も電荷が残るため、感電防止のためにブリーダ抵抗(放電抵抗)を並列に接続する必要があります。
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感電防止の安全基準(IEC60384-14など)に準拠したものが使用されます。
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Yコンデンサ(ライン-GND間コンデンサ)
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役割: 主にコモンモードノイズを除去します。
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動作原理: 電源ライン(L-GND間、N-GND間)に接続され、電源ラインに乗ったノイズをグラウンドにバイパスさせます。
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特徴:
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静電容量は小さく設定されます。これは、漏洩電流(コンデンサを介してグラウンドに流れる電流)を抑えるためです。漏洩電流が大きいと、感電や漏電遮断器の誤動作の原因となります。
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故障した場合、開放(オープン)モードになるように設計されています。これにより、漏洩電流の増加を防ぎます。
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Xコンデンサと同様に、安全規格に準拠したものが使用されます。
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EMC対策の考え方
EMC対策は、XコンデンサとYコンデンサの単独使用だけでなく、他の部品と組み合わせることでより効果が高まります。
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フィルタリング:
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XコンデンサとYコンデンサは、コモンモードチョークコイルと組み合わせてLCフィルタを構成することで、広範囲の周波数ノイズに対応できます。
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一般的に、コモンモードチョークコイルは低い周波数帯のノイズ、Yコンデンサは高い周波数帯のノイズに効果があります。
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配置と配線:
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コンデンサは、ノイズ源の近くに配置することが重要です。
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グランド(GND)の強化も不可欠です。GNDビアやGNDガードを適切に配置することで、ノイズの伝播を抑えられます。
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配線は短く、太くすることでインピーダンスを低減し、ノイズの放射を抑えます。
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シールディング(シールド):
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筐体やケーブルにシールドを施し、ノイズの外部への放射や外部からのノイズの侵入を防ぎます。
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シールドは、グラウンドに適切に接続する必要があります。
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EMC対策は、シールド、グラウンディング、フィルタリング、配線、配置など、複数の手法を組み合わせて総合的に行うことが重要です。
参考動画:エンジャー / Engeer チャンネル
【ノイズ対策】知らないとヤバい!XコンデンサとYコンデンサ #90