
シート型多機能センサとは、薄いフィルムやシート状の基板に複数の異なるセンシング機能を集積・実装したデバイスです。高い柔軟性(フレキシビリティ)と大面積化が特徴で、従来の硬いセンサでは不可能だった曲面への密着や、広範囲にわたる情報の一括計測を実現します。
この技術は、プリンテッドエレクトロニクス(印刷技術を用いて回路や素子を形成する技術)などの進化によって実現しています。
シート型多機能センサの主な機能
「多機能」とは、一枚のシート上で複数の物理量や生体情報を同時に、または複合的に計測できることを意味します。
センシングされる主な情報 | 具体的な機能・計測対象 |
生体情報 | 指紋、静脈、脈波、心拍数、呼吸、体温、発汗など |
物理量 | 感圧(加圧力分布)、ひずみ、温度分布、磁気など |
光学情報 | イメージング(光センサ)、色のムラ、欠陥、異物 |
シート型多機能センサの利活用分野
柔軟性と多機能性を活かし、ヘルスケア、セキュリティ、製造業など幅広い分野での応用が期待されています。
1. ヘルスケア・ウェアラブルデバイス
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バイタルサインの同時計測: 薄型で体に密着するため、睡眠中や運動中の心拍数、呼吸、体温などを常時・継続的にモニタリングするウェアラブル機器への応用。
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医療・介護: ベッドや衣服に組み込み、要介護者の体圧分布や姿勢、体位変化をリアルタイムで検知し、床ずれ予防や介護支援に役立てる。
2. セキュリティ・認証
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高精度生体認証: 一枚のイメージセンサシートで指紋、静脈、脈波といった複数の生体情報を同時に計測し、高い精度で個人を特定することで、「なりすまし」を防止する。
3. 製造業・産業用途
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非破壊検査: シート状の光センサや磁気センサを組み込んだシステムで、ディスプレイ、フィルム、電池などの大面積製品のムラ、欠陥、異物を高速かつ高精度に検出・判別する。
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構造物モニタリング: 橋梁や配管などの曲面にセンサシートを貼り付け、ひずみや温度変化を多点・広範囲で監視し、インフラの安全管理に役立てる。
この技術は、センサを「点」ではなく「面」で捉え、多様な情報を同時に取得できることから、IoT社会における情報取得のあり方を大きく変える可能性を秘めています。
多検知フレキシブルセンサの応用:大学の研究シーズのご紹介に関する動画では、その一部が紹介されています。 多検知フレキシブルセンサの応用:大学の研究シーズのご紹介 この動画は、フレキシブルセンサの技術とその応用事例について具体的に解説しているため、理解を深めるのに役立ちます。