PSJGaNデバイスとは、分極超接合(Polarization Super-Junction: PSJ)構造を採用した窒化ガリウム(GaN)パワー半導体デバイスです。この特殊な構造により、従来の横型GaNデバイスでは難しかった**超高耐圧領域(数kV級)**への適用が可能となり、高い効率と高速性を両立させます。
GaNの強みである高速スイッチング特性を維持しつつ、特にEV、再生可能エネルギー、産業機器などで求められる高電圧・大電流用途への応用が期待されています。
PSJGaNデバイスの構造と高耐圧化のメカニズム
PSJGaNデバイスは、主にドレイン耐圧の向上を目的として、GaNデバイスの主要な部分であるドリフト層に工夫を凝らしています。
1. 構造の核心:分極超接合(PSJ)
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従来のGaN: 一般的な横型GaNデバイス(HEMTなど)は、ドレイン電極とゲート電極間の距離を長くすることで耐圧を稼ぎますが、これはオン抵抗の増加につながります。
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PSJ構造: PSJは、GaNの持つ自発分極と圧電分極の特性を利用して、p型とn型の層を交互に垂直に積層した構造です(超接合構造)。
2. 高耐圧化のメカニズム
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電界の分散:p層とn層を交互に配置することで、デバイスに高電圧(ドレイン電圧)がかかった際、ドリフト領域全体の電界が均一に分散されます。これにより、特定の箇所への電界集中を防ぎ、絶縁破壊(ブレークダウン)耐量を劇的に向上させます。
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耐圧の比例性: PSJ構造の長さ(PSJ長)を長くするほど、電界を分散させる距離が伸び、**耐圧も比例して増加**します。研究では、PSJ長が 100μm程度で6000 Vを超える耐圧が確認されており、超高耐圧化への道を開いています。
PSJGaNデバイスのメリット
PSJ構造は、GaNデバイスが本来持つメリットを、高耐圧領域でも実現させます。
| メリット | 詳細 |
| 超高耐圧の実現 | 従来の横型GaNデバイスが実質的に1200 V程度が上限であったのに対し、6000 V以上の耐圧も設計可能となり、SiCの主要な耐圧領域と競合します。 |
| 低損失・高速スイッチング | 従来の耐圧向上手法と異なり、オン抵抗の増大を抑えつつ高耐圧を実現するため、GaNの持つ高速スイッチング特性を維持できます。これにより、電力変換ロスが極めて低い装置が実現します。 |
| 装置の小型・高効率化 |
低損失であるため、発熱が少なく、冷却システムを小型化できます。また、高速スイッチングにより受動部品も小型化できるため、電力変換装置全体の小型化と高効率化に大きく貢献します。 |
この動画は、通常のパッシブプローブと光アイソレーション差動プローブの違いを比較し、正確に観測するために光アイソレーション差動プローブが必要であることを示しています。
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