チップ貫通電極(TSV: Through Silicon Via)は、半導体チップを垂直方向に接続するための技術であり、3次元積層(3D Integration)において不可欠な要素です。
これは、チップのシリコン基板を垂直に貫通する電極(ビア)のことで、従来のチップ端部での配線やワイヤーボンディングに代わる、高性能な接続手段を提供します。
1. TSVの構造と機能 🏗️
TSVは、以下のような構造と機能を持っています。
| 項目 | 詳細 |
| 構造 | Siウェハまたはチップを貫通して形成された、銅(Cu)などの導電性材料で埋められた垂直な穴(ビア)。周囲は酸化膜などの絶縁層で覆われます。 |
| 機能 | 上下に積層されたチップ(または、チップとインターポーザー)間で、電気信号を垂直かつ最短距離で伝達します。 |
| プロセス | 主に、回路形成後にウェハを薄化し、裏面から穴を開けて電極を埋め込むTSV-lastプロセスや、回路形成前にTSVを先に作るTSV-firstプロセスなどがあります。 |
2. TSVによる主なメリット 🚀
TSVは、従来の2次元的なチップ実装技術と比較して、以下の大きなメリットをもたらします。
| メリット | 従来の配線技術(ワイヤーボンディングなど)との比較 |
| 超短配線化 | 接続経路がチップを貫通する垂直方向になるため、配線長が劇的に短縮されます(たかだか数十 μm)。 |
| 低遅延・低消費電力 | 配線長が短いことで、信号伝送に伴う寄生容量や抵抗が大幅に減少し、信号の遅延が最小化され、結果として消費電力も低減されます。 |
| 高密度化 | TSVを微細なピッチ(間隔)で高密度に配置できるため、チップ間のI/O端子数(接続密度)が飛躍的に向上します。 |
| 高性能・高機能 | 広帯域化が可能となり、CPUとHBM(High Bandwidth Memory:DRAMをTSVで積層したもの)など、異なる機能を持つチップのヘテロジニアス(異種)集積を可能にします。 |
3. 主要な応用事例
TSVは、現在以下の先端半導体製品で広く活用されています。
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HBM(High Bandwidth Memory): DRAMチップを多数(8〜12層など)垂直に積層し、TSVで接続することで、データ転送速度を大幅に向上させたメモリ。
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3次元積層CMOSイメージセンサ: イメージセンサの画素部と信号処理回路を別チップとして積層し、TSVで接続することで、高性能化・多機能化を実現。
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Co-Packaged Optics (CPO): 電子チップ(CPU/GPU)と光チップ(フォトニクス)をパッケージ内で集積する際にも、TSVが電力供給や制御信号の接続に使われます。



