深掘りエッチング (Deep Reactive-Ion Etching: DRIE) は、半導体やMEMS(微小電気機械システム)の製造において、基板上にアスペクト比の高い(深く、かつ側壁が垂直な)微細構造を形成するためのドライエッチング技術です。
この技術は、特にシリコン (Si) 基板の加工で不可欠であり、通常、そのプロセスの名称から「深掘りRIE (Deep RIE)」とも呼ばれます。
🛠️ 深掘りエッチング(DRIE)の仕組み
最も広く使用されているDRIEの手法は、ロバート・ボッシュ社が開発した「ボッシュプロセス (Bosch Process)」と呼ばれる、エッチングと保護(パッシベーション)のステップを高速で繰り返すものです。
ボッシュプロセス(切り替えエッチング方式)の工程
DRIEでは、主に2種類のガスを交互に導入します。
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エッチングステップ:
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ガス: 主に六フッ化硫黄 (SF6) ガスが使用されます。
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作用: SF6ガスから生成されたラジカル(遊離基)がシリコンと反応し、シリコンを等方的(横方向にも)にエッチング(除去)します。
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保護ステップ(パッシベーション):
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ガス: 主にテフロン系のガス(例: C4F8)が使用されます。
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作用: このガスが微細構造の**側壁に保護膜(パッシベーション膜)**として堆積します。
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この2つのステップを交互に繰り返すことで、以下の効果を得ます。
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垂直性(異方性)の確保: 保護膜が横方向のエッチングを抑制し、底面のみがイオンの衝突によって除去され続けます。その結果、非常に深い溝や穴を垂直な側壁で掘り進めることができます。
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高アスペクト比: 狭い開口部に対して、深さ(高さ)が非常に大きな構造を実現できます。
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スカロップ(Scallop): ステップを繰り返すため、完全に垂直ではなく、側壁には周期的な微小な段差(スカロップ)が生じます。高性能なデバイスでは、このスカロップを低減する低スカロップ加工が求められます。
🔬 深掘りエッチングの応用分野
DRIEは、MEMSデバイスのバルクマイクロマシニング(基板そのものを加工する技術)の主要な作製技術として不可欠です。
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MEMSセンサー:
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加速度センサー/ジャイロセンサー: 可動部と固定部を持つ複雑な微細な機械構造(慣性マス、スプリングなど)の形成。
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圧力センサー: 薄いダイアフラム(振動膜)構造の形成。
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光デバイス/MOEMS:
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光スイッチやLiDAR用MEMSスキャニングミラーの可動構造。
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半導体デバイス:
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DRAM (ダイナミックRAM): 高い静電容量を得るためのキャパシタの深い溝構造の形成。
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LSI実装: Si 貫通電極(TSV: Through-Silicon Via)の形成。
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医療・バイオ: マイクロ流路(微小な流体制御チャネル)の形成。
この動画は、「Si深掘りエッチング(Deep-RIE)技術とその応用」について、プロセスや課題を含めて詳細に解説しています。 Si深掘りエッチング(Deep-RIE)技術とその応用。
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