スキップレイヤー経路の電磁界解析で得られる特定の解析結果は、主にSパラメータの曲線と、構造内の電磁界(EM Field)の可視化図です。これらは、チャネルの性能を評価し、設計上の課題を特定するために使用されます。
📉 損失曲線(Sパラメータ)
高速伝送路の性能を定量的に示す最も重要な結果がSパラメータのグラフです。スキップレイヤー経路は差動ペアであるため、通常は差動モードSパラメータ(Sdd)が使用されます。
1. 挿入損失曲線 (Sdd21 - 伝送特性)
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定義: 信号源から伝送路に入力された電力が、負荷端にどれだけ伝達されたかを示す損失(デシベル:dB)。
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理想的な曲線: 周波数が増加しても損失が緩やかに増加する曲線(低損失)。
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解析で着目する点:
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高周波での損失の増加: スキップレイヤー経路では、表皮効果(Skin Effect)による銅損と誘電体損失が主要な損失源となります。特に56 GHzのような超高周波数では、銅損が主要な制限要因となります。
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準TEMカットオフ周波数: この周波数を超えると、伝送モードが変化し、$S_{dd21}$曲線が急激に低下し始めます。これは、チャネルが信号帯域幅を維持できなくなることを示します。224G PAM-4チャネルでは、ナイキスト周波数(56 GHz)まで許容可能な損失レベルを維持することが目標です。
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2. 反射損失曲線 (Sdd11 - 反射特性)
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定義: 信号源から伝送路に入力された電力のうち、反射して戻ってきた電力の割合(デシベル:dB)。これはインピーダンス整合の良さを示します。
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理想的な曲線: 周波数全域で低い値(例:-10 dB以下)を維持する曲線。
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解析で着目する点:
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インピーダンス不連続性: スキップレイヤー経路の構造変化、ビアの寄生効果、または設計上の不整合がある周波数で、反射損失が急激に悪化(dB値が上昇し、例えば-10 dBを超える)します。
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低反射の維持: Sdd11が低い(反射が少ない)状態を広帯域にわたって維持できていることが、スキップレイヤー経路設計の成功を示します。
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🖼️ 電磁界(EM Field)の可視化図
電磁界シミュレータを使用する最大の利点は、伝送路内の**電界(E-Field)と磁界(H-Field)**の分布を視覚化できることです。
1. 断面の電界分布図
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解析目的: 信号の伝送モードとシールド効果の確認。
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観察される現象:
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準TEMモード: 理想的なスキップレイヤー経路では、電界線が差動ペア間、および差動ペアから周囲のビア・フェンスとグラウンドプレーンに向かって集中し、差動同軸導波管のような分布を示します。
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クロストークの確認: 隣接する差動ペア(レーン)が存在する場合、電界の一部が隣接レーンに漏れ出している様子を確認できます。
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ビア・フェンスの役割: ビア・フェンスが電磁波を効果的に閉じ込め、外部への漏洩(EMI)や隣接レーンへの結合(クロストーク)を防いでいるかを、電界線の分布から確認します。
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2. 高次モードの発生図
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解析目的: 準TEMカットオフ周波数を超えた高周波数での伝送モードの確認。
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観察される現象:
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カットオフ周波数を超える周波数でシミュレーションを行うと、電磁界のパターンが大きく乱れ、差動信号以外の高次モード(非TEMモード)の伝播が開始されます。
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この高次モードの発生は、信号のエネルギーを不必要な方向に拡散させ、急激な信号劣化(Sdd21の急降下)を引き起こします。電界図上で、エネルギーがトレースの中心から離れ、構造全体に不均一に広がっている様子が観察されます。
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これらの解析結果は、設計者がスキップレイヤー経路のジオメトリパラメータを微調整し、超広帯域チャネルに必要な性能を確保するための重要な指針となります。
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