メカニカル・リレーのOFF時過電圧トラブルの主な対策は、リレーコイルの逆起電力(サージ電圧)の吸収です。コイルの電流を遮断した際に発生するこの高電圧が、駆動回路(トランジスタなど)の破壊や誤動作の原因となります。
💡 主な対策
1. サージ吸収回路の付加
リレーコイルの両端にサージ吸収回路を付加するのが最も一般的な対策です。
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ダイオード(フライホイールダイオード/サージ吸収ダイオード)
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直流(DC)リレーコイルに最も多く用いられます。
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コイルに並列に逆方向(カソード側が電源側)に接続し、OFF時に発生した逆起電力をダイオードを通してコイル内で還流させ、電圧上昇を抑えます。
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注意点: 復帰時間(リレーOFFになるまでの時間)が長くなる傾向があります。
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バリスタ(MOV:Metal Oxide Varistor)
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交流(AC)リレーのコイルや接点保護によく用いられますが、DCリレーにも使用可能です。
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一定の電圧を超えると急激に抵抗が下がり、サージ電流を吸収します。
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CR吸収回路(スナバ回路)
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コンデンサ(C)と抵抗(R)を直列にした回路で、主に交流(AC)リレーの接点側や一部のDCリレーコイルに用いられます。
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サージエネルギーを吸収・放散し、電圧上昇の緩和とノイズ抑制に効果があります。
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2. 配線上の工夫
サージ吸収部品を適切に配置しても、配線インダクタンスの影響で保護効果が薄れることがあります。
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保護部品の配置: 保護ダイオードやコンデンサは、リレーコイルの端子だけでなく、保護したい半導体部品(スイッチング素子)の近くにも配置することで、配線が短い状態となり、配線インダクタンスの影響を軽減できます。
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配線の工夫: コイルへの往復の線を**ツイスト(ひねる)**することで、発生する磁界を打ち消し合い、ノイズ抑制効果を高めます。
リレーコイルのサージ対策は、リレーだけでなく、それを駆動する半導体素子の保護に不可欠です。
下記資料では「リレーコイルのサージ対策技術」について詳しく解説されています。
『メカニカル・リレーOFF時の過電圧トラブル解消のヒント』 武田 英夫 トランジスタ技術2025-12月号
半導体部品の保護に不可欠な電磁リレーの基礎知識とサージ対策について解説している動画です:
メカニカル・リレーOFF時の 過電圧トラブル解消のヒント (動画)





