多結晶ダイヤモンド(PCD)基板上に窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(GaN-HEMT)を作製する技術は、主に高出力・高周波デバイスの熱問題の解決を目指した、非常に重要な研究開発分野です。
この組み合わせは、GaNの優れた電気的特性とダイヤモンドの究極的な熱特性を融合させることを目的としています。
💎 なぜ多結晶ダイヤモンド(PCD)基板なのか?
GaN-HEMTは非常に高い電力密度で動作しますが、その結果として発生するジュール熱を効率よく逃がす必要があります。熱が蓄積すると、トランジスタの性能低下、信頼性の低下、寿命の短縮につながります。
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ダイヤモンドの熱伝導率: ダイヤモンドは、既知の物質の中で最も高い熱伝導率(室温で約 2000 W/mK以上)を持ちます。これは、従来のGaN-HEMTに使われる主要な基板材料である**SiC(炭化ケイ素)**の約5倍、**Si(シリコン)**の約15倍にあたります。
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熱抵抗の低減: GaN層の真下にダイヤモンドという究極のヒートスプレッダを配置することで、デバイスの熱抵抗を大幅に低減し、GaN-HEMTの出力電力と動作寿命を向上させることができます。
🔬 作製技術の主な課題
多結晶ダイヤモンド(PCD)基板上にGaN-HEMTを直接作製するには、いくつかの技術的な障壁があります。
1. 異種材料接合 (Heterogeneous Integration)
GaNを高品質に成長させるためには、結晶構造や格子定数が近い基板(サファイアやSiCなど)を使用するのが一般的です。ダイヤモンドは結晶構造が大きく異なるため、直接成長は非常に困難です。
2. GaN層とダイヤモンド基板間の界面熱抵抗
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課題: 最も重要な課題の一つが、GaN層とダイヤモンド層の間に存在する接合界面です。この界面で熱が伝わりにくくなる現象(界面熱抵抗)が発生すると、ダイヤモンドの高い熱伝導率を活かせなくなります。
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解決策: この界面熱抵抗を最小限に抑えるために、GaNとダイヤモンドの中間に**超薄膜のバッファ層(中間層)**を挿入したり、GaN層を直接ダイヤモンド上に接合する技術が研究されています。
3. 多結晶ダイヤモンドの品質
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PCDの使用: GaNの高品質な単結晶膜が得られる「単結晶ダイヤモンド基板」は非常に高価であるため、比較的低コストで大面積化が可能な多結晶ダイヤモンド(PCD)基板が一般的に検討されます。
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表面粗さ: PCD基板は単結晶に比べて表面の**粗さ(ラフネス)**が大きい傾向があり、これがGaN結晶の品質や界面の熱抵抗に悪影響を与えることがあります。
💡 研究開発のアプローチ
現在の研究開発は主に以下の二つのアプローチで進められています。
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直接成長法 (Direct Growth):
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SiCやサファイア上にGaNを成長させた後、元の基板を除去し、GaN層の裏側に**CVD法(化学気相成長法)**などを用いてダイヤモンド薄膜を直接形成する。
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接合法 (Bonding):
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別々に作製されたGaN-HEMT構造のウェハとダイヤモンド基板を、原子レベルで平坦な界面を形成しながら貼り合わせる(例:接合界面にSiCなどの薄い中間層を用いる)。
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この技術が確立されれば、現在の無線基地局、レーダー、衛星通信といった分野の**高出力アンプ(増幅器)**において、大幅な小型化と高性能化が実現すると期待されています。
下記資料では「2インチ多結晶ダイヤモンド(PCD)基板上にGaNトランジスタ(GaN-HEMT)を作製」について詳しく解説されています。
https://sumitomoelectric.com/press/2025/05/prs032
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