「Power Divider (パワーディバイダー)」と「Power Splitter (パワースプリッター)」は、RF(高周波)システムにおいて入力信号を複数の出力信号に分割するパッシブ(受動)回路ですが、その回路構成と意図された用途に技術的な違いがあります。1
一般的に、カタログや業界ではこれらが混同して使用されることが多いですが、精密なRFエンジニアリングでは、特に以下の点で区別されます。
⚡️ 技術的な違い(抵抗構成による区別)
最も基本的な違いは、信号を分割するために使用される内部の抵抗の構成です。
| 特徴 | Power Divider(パワーディバイダー) | Power Splitter(パワースプリッター) |
| 抵抗構成(一般的) | **3抵抗(T型またはスター型)**の構成。 | **2抵抗(直列)**の構成。 |
| 全ポートの整合 | **入力ポート(Port 1)**だけでなく、**すべての出力ポート(Port 2, 3...)**のインピーダンス(通常 50 Ω)が整合している。 | 入力ポートは整合しているが、出力ポートのインピーダンスは必ずしも整合していない(通常 83.3 Ωなどになる)。 |
| 出力ポート間のアイソレーション | 高い(出力ポート間の信号干渉が少ない)。有名なWilkinson (ウィルキンソン) 分配器はこの特徴を持つ。 | 低い(出力ポート間のアイソレーションが低い)。 |
| 主な損失要因 | 抵抗による損失(約 6 dBの理論的損失:3 dBの分割損失 + 3 dBの抵抗損失)。 | 抵抗による損失(理論的損失)。 |
🔍 ポイント:全ポート整合とアイソレーション
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パワーディバイダー(例:Wilkinson): すべてのポートで反射がないように設計されており、S11, S22, S33 のリターンロスが非常に良好です。また、出力ポート間(S23)のアイソレーションが優れており、片方の出力ポートに異常な反射があっても、もう一方のポートへの影響が少ないため、比較測定やフェーズドアレイアンテナなど、ポート間の干渉を厳密に避けたい用途に適しています。
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パワースプリッター: 構成がシンプルで低コストですが、出力ポートの整合やアイソレーションがディバイダーほど優れていません。
📊 用途の違い(使用目的による区別)
技術的な違いが、それぞれのデバイスの主な用途を決定します。
| 目的 | Power Divider(パワーディバイダー) | Power Splitter(パワースプリッター) |
| 信号分配 | 等しい信号の分配(クロック信号のファンアウトなど)。 | 信号の分配(CATVなど一般的な消費者向けRF用途が多い)。 |
| 計測 | 比較測定ループやIMD(相互変調ひずみ)測定など、全ポートの厳密な整合が必要な高精度なラボ計測。 | レベリング(信号源のマッチング改善)やレシオ測定など、特定の測定タスク。 |
| 合成器としての使用 | 信号合成器(Power Combiner)としても使用可能(双方向性)。 | 信号合成器としても使用可能だが、入力信号間に位相差が必要な場合がある(例:90度ハイブリッド)。 |
要するに、Power Dividerは、整合とアイソレーションを最優先した高精度な計測やシステムに使用されることが多く、Power Splitterは、シンプルさとコストを優先した一般的な信号分配に使用される傾向があります。
【高周波】初心者でもわかる!分配器の種類と特徴という動画は、スプリッターとディバイダーの回路構成の違いと特徴を初心者にもわかりやすく解説しています。
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