メモリデバイスの試験において、セル間干渉(Cell-to-Cell Interference, CCI)によって生じる不良は、微細化が進むにつれて非常に重要な問題となっています。
🚨 セル間干渉による主な不良
セル間干渉は、主に以下のような形でメモリの信頼性を低下させます。
-
読み出しエラー(Read Errors)
-
目的のセルを読み出す際に、隣接するセルの電荷や状態が干渉し、読み出し電圧や電流が変化することで、誤ったデータ(例:'1'が'0'、または'0'が'1')として判定されてしまいます。
-
-
書き込みエラー(Write Errors)
-
目的のセルにデータを書き込む際に、書き込みプロセスが隣接セルに意図しない影響を与え、その隣接セルのデータが変化してしまう(Disturb不良の一種)。
-
例: Program Disturb (書き込み中のセルが隣接セルに干渉) や Read Disturb (読み出し電圧/電流が隣接セルに長時間印加されることによる干渉) などがあります。
-
-
-
保持不良(Retention Errors)の悪化
-
微細化によりセル間の距離が近づくと、隣接セルの電荷による電界が目的のセルの電荷保持能力に影響を与え、データ保持期間が短くなることがあります。
-
🔍 特に問題となるメモリタイプ
この不良が特に問題となるのは、高密度化が進んでいる以下のメモリタイプです。
-
NANDフラッシュメモリ
-
特に多値セル(MLC, TLC, QLC)を使用する場合、セルごとの電荷レベルの差が小さくなるため、わずかな干渉でもエラーになりやすくなります。また、セルを縦方向に積み重ねる3D NANDにおいても、隣接するビット線、ワード線、さらには積層方向のセルからの干渉が複雑になります。
-
🔬 試験で対象となる具体的な干渉
試験では、以下のような特定の干渉パターンや条件下での不良が評価されます。
-
隣接セル干渉(Adjacent Cell Interference):
-
特に、**ワード線方向(Wordline Direction)とビット線方向(Bitline Direction)**の直近のセルからの干渉が最も大きくなります。
-
-
コーナーセル干渉(Corner Cell Interference):
-
斜め方向のセルからの干渉も無視できません。
-
-
特定のパターン依存性:
-
特定のデータパターン(例: 全て'1'、全て'0'、市松模様など)がセルアレイに書き込まれている場合に、干渉の影響が最大になるかを評価します(Pattern Sensitivity)。
-
-
電位制御の最適化:
-
書き込みや読み出しの際に、隣接セルに対して適切な抑制電圧(Inhibit Voltage)を印加することで干渉を最小限に抑える技術が用いられますが、この制御が最適でない場合に不良が発生しないかを検証します。
-
これらの不良は、**特殊なマーチテスト(March Test)**のパターンや、パターンテスト、ディスターブテストなどの手法を用いて検出されます。
セル間干渉による不良は、**「微細化に伴う物理的限界」**に深く関わるため、デバイスの設計、製造プロセス、そして試験手法の全てにおいて重要な検討事項となります。




