IEGT(Injection Enhanced Gate Transistor)は、日本語で電子注入促進型絶縁ゲートトランジスタと呼ばれ、主に高耐圧・大電流の電力変換用途に特化して開発されたパワー半導体デバイスです。
これは、従来のIGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor)の構造を改良し、特に高耐圧化に伴うオン電圧の増大という課題を克服した点が最大の特徴です。
⚡ IEGTの基本原理と特徴
IEGTは、IGBTと同様に電圧駆動で大電流を制御できるMOSゲート構造を持ちながら、サイリスタの一種であるGTO (Gate Turn Off Thyristor) に匹敵する低オン電圧降下を実現しています。
1. 動作原理:IE効果(電子注入促進効果)
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IGBTの課題: 高耐圧化(4.5kV以上など)を図るには、素子内の電流が流れる領域(Nベース層)を厚くする必要があり、その結果、電流を流しているときの抵抗分が増え、オン電圧(VCE(sat))が急激に増大し、損失が増えるというトレードオフがありました。
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IEGTの解決策: IEGTは、エミッタ側のセル構造に深く幅の広いトレンチゲート電極領域などの工夫を導入しています。これにより、素子がオン状態のときに、電流を流すキャリア(電子とホール)のうち、電子がエミッタ側に大量に注入・蓄積される現象が起こります。
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効果: この電子注入促進効果 (IE Effect)により、高耐圧化のために厚くなったNベース層内のキャリア濃度を効果的に高め、全体の導通抵抗を大幅に下げることができます。結果として、高耐圧でありながらオン電圧を低く保つことが可能になります。
2. IEGTの主な特徴
| 特徴 | 詳細 | 比較対象 |
| 高耐圧・大電流 | 4.5kV以上の超高耐圧領域で動作可能で、大電力を制御できます。 | IGBT |
| 低オン電圧 | GTOサイリスタ並みの低い飽和電圧降下VCE(sat)を実現し、導通損失を低減します。 | 高耐圧IGBT |
| 高速スイッチング | IGBTと同様に電圧駆動が可能であり、GTOよりも高速なスイッチングが可能です。 | GTO |
| 広い安全動作領域 | 高いdi/dtおよびdv/dt耐量を持つため、高い信頼性を確保します。 | GTO |
| 電圧駆動 | ゲート電圧のオン/オフで制御できるため、複雑な電流駆動回路が必要なGTOに比べ、ゲートユニットの簡素化・小型化が可能です。 | GTO |
🏭 主な用途
IEGTは、その高い耐圧・大電流特性と低損失性能から、特に大容量の電力変換を必要とするインフラ分野で使用されます。
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高電圧直流送電 (HVDC) システム
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大容量産業用インバータ(例:製鉄所、セメント工場などの大規模モータードライブ)
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鉄道の変電所や電力変換装置
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パルス電源、加速器用の電磁石電源
IEGTは、IGBTやGTOがカバーしきれない超高耐圧・大容量の領域において、電力機器の省エネ化、小型化、高効率化に大きく貢献するキーデバイスです。
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