強化窒化ガリウム(iGaN)は、オンセミ(onsemi)がパワー半導体市場向けに提供している独自の高性能GaN(窒化ガリウム)技術の商標名です。
これは、オンセミが既存のシリコン(Si)ベースのパワー半導体技術に代わる、高効率かつ高速スイッチングが可能な次世代のワイドバンドギャップ(WBG)半導体として推進している製品群です。
⚡ iGaNの主な特徴と技術
GaNは、従来のシリコンに比べて高い電子移動度と大きなバンドギャップを持つため、電力変換において優れた特性を発揮します。オンセミのiGaNはその特性を最大限に引き出すための技術です。
1. 強化(Enhancement-Mode: E-mode)型
「強化」(iは"Intelligent"や"Integrated"を指すことが多いですが、ここではデバイスの動作モードとして重要です)という名称が示す通り、オンセミのGaNデバイスは主に**エンハンスメント・モード(E-mode)**で構成されています。
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E-modeの特性: ゲート電圧を印加しない(VGS = 0V)ときに**オフ状態(ノーマリーオフ)**になります。これは、システムの安全性を保つ上で、従来のシリコンMOSFETと同じ制御方式が使えるため、設計が容易であり、市場で最も一般的に求められる形式です。
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構造: 一般的にp-GaNゲート構造を用いて、通常はオン状態になりやすい二次元電子ガス(2DEG)層を、ノーマリーオフ特性にしています。
2. 高速スイッチングと低損失
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低寄生容量: iGaNデバイスは、シリコンMOSFETと比較して入力容量(Ciss)や出力容量(Coss)が非常に小さいため、極めて高速なスイッチング(MHzオーダー)が可能です。
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低逆回復電荷(Qrr): GaNデバイスには本質的にダイオードが存在しないため、逆回復電荷(Qrr)が実質的にゼロです。これは、ブリッジ回路などでダイオードの逆回復損失(Err)が問題となるアプリケーション(例:トーテムポールPFC)において、大幅な損失低減と効率向上をもたらします。
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低オン抵抗(RDS(on)): 高い電子移動度により、低いオン抵抗を実現し、導通損失を最小限に抑えます。
🏭 主要な応用分野
iGaNは、その優れた高速・高効率特性から、電力密度(Power Density)の向上と省エネルギー化が強く求められる分野で使用されます。
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AC/DC電源: データセンター、サーバー、通信機器向けの高効率電源(PFC回路やLLCコンバータなど)。小型化と高効率化に貢献。
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EV/HEVの車載充電器(OBC): 高速充電と小型化が求められる車載電力変換システム。
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再生可能エネルギー: 太陽光発電(PV)用インバータなど、電力変換効率が直接収益に影響する分野。
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民生用高速充電器: USB PD対応の高出力ACアダプタ(GaN充電器)の小型・軽量化に不可欠。
オンセミは、iGaNを**SiC(炭化ケイ素)**と並ぶ主要なワイドバンドギャップ戦略の柱と位置づけており、特に低~中電力帯(例:650V耐圧)でその優位性を発揮しています。
下記資料では「4つの寄生パラメータ(Ciss、Coss、Crss、Rg)を簡便に測定する高電圧CV測定器」について詳しく解説されています。
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