LiDAR(ライダー)向けのPCSELは、自動運転やロボットの「目」として、現在の主流であるVCSELや端面発光レーザー(EEL)を置き換える存在として期待されています。

LiDARに求められる**「遠方までの検知」「高い解像度」「小型化」**という3つの要求を、PCSELは高いレベルで同時に満たすことができます。


LiDARにおけるPCSELの3つの強み

1. 圧倒的な高輝度と長距離計測

LiDARで200m〜300m先を検知するには、強い光を拡散させずに飛ばす必要があります。

  • PCSEL: ビームの拡がり角が非常に小さいため(0.1度レベル)、レンズで絞らなくても光が遠くまで届きます。

  • メリット: 出力ロスが少なく、太陽光などのノイズに強い「高S/N比」な計測が可能です。

2. スキャナレス(ソリッドステート)化の実現

従来のLiDARはミラーを物理的に回転させて光をスキャンしていましたが、PCSELは**「光変調」**が可能です。

  • 電子スキャン: フォトニック結晶の構造を工夫することで、電気的にビームの方向を制御する技術(非機械式スキャン)の研究が進んでいます。

  • メリット: 可動部がないため、故障しにくく、振動の激しい車載環境での信頼性が飛躍的に向上します。

3. 短パルス動作による高精度な距離測定

LiDARは光をパルス状に出して戻るまでの時間を測る(ToF方式)ため、高速な応答性が求められます。

  • 特性: PCSELは大面積でありながら、ナノ秒単位の高速駆動でも波長が安定しており、距離の測定精度(解像度)を高めることができます。


既存技術との比較

比較項目 VCSEL 端面発光レーザー (EEL) PCSEL
出力 低〜中 極めて高い
ビーム品質 低(歪みあり) 極めて高い(真円)
信頼性
スキャン方式 機械式が必要 機械式が必要 電子スキャンが可能

実用化への動き

現在、三菱電機や浜松ホトニクス、スタンレー電気などの日本企業が、京都大学の技術をベースに車載グレードのPCSEL開発を加速させています。すでにサンプル出荷が始まっているケースもあり、2020年代後半にはLiDARの標準光源の一つになると予測されています。

豆知識: PCSELはレンズなどの光学部品を大幅に削減できるため、LiDARユニット全体のサイズをスマートフォンのカメラサイズ程度まで小型化できる可能性を秘めています。

PCSELの「電子スキャン(ビーム走査)」の仕組みや、特定のメーカーの開発状況について、さらに深掘りして解説しましょうか?