DPWM1 (Discontinuous PWM 1) は、一相PWM変調(二相変調)の中でも、特に**「電力変換効率の最大化」**を目的とした非常に賢い変調パターンです。

最大の特徴は、**「相電流が最大になるタイミングで、その相のスイッチングをピタリと止める(上下どちらかのレールに貼り付ける)」**ことにあります。


DPWM1の核となるアイデア

インバータのスイッチング損失(Psw)は、大まかに次の式で表されます。

Psw ≒  Vdc X  I X  fsw

(Vdc: 直流バス電圧, I: その瞬間の電流値, fsw: スイッチング周波数)

通常のPWMでは fsw は常に一定ですが、DPWM1では「電流 I が大きいタイミング」でスイッチングを休止(実質 fsw = 0)させます。これにより、最も損失が出るはずのポイントを狙い撃ちでカットできるため、他のDPWM方式(DPWM0やDPWM2など)よりも効率面で有利になります。


波形と制御の仕組み

DPWM1では、三相の電圧指令値に対して、位相を**30° ずらしたタイミング**で各相を 60° ずつ上下のレールに貼り付けます。

  1. 力率1の場合: 電流のピークは電圧のピークと一致します。

  2. 貼り付け区間: 電圧指令値が最大(または最小)付近の前後 30°(計  60° )の間、その相のゲート信号を「H固定」または「L固定」にします。

  3. スイッチング回数: 1周期(360°)のうち、計 120° 分(60° X 2)のスイッチングが消えるため、損失が大幅に低減します。


他の方式との比較

方式 特徴 最適な負荷条件
連続PWM (SPWM) 常に全相スイッチング。 低負荷・低速時(低ノイズ重視)。
DPWM0 電圧ピークより 30° 前で貼り付け。 遅れ力率(モーター駆動など)に対応。
DPWM1 電圧ピークを中心に貼り付け。 力率が1に近い系(SSTの入力段や系統連系など)。
DPWM2 電圧ピークより 30° 後で貼り付け。 進み力率に対応。

SST(ソリッドステート・トランス)における重要性

これまでお話ししてきたSSTやマトリックスDABにおいて、DPWM1は「標準装備」とも言える技術です。

  • 高圧SiC素子の保護: SSTでは数kVの電圧を扱います。DPWM1によって発熱を抑えることは、素子の熱破壊を防ぎ、信頼性を高める直結した手段です。

  • 高調波とのトレードオフ: スイッチングを止めることで電流波形に歪み(高調波)が出やすくなりますが、SSTのような大電力システムでは、**「歪みはフィルタで抑え、損失は変調法で抑える」**という設計思想が一般的です。


設計のツボ: 実際のシステムでは、負荷の力率(cos θ)をリアルタイムに計算し、DPWM0〜DPWM2を動的に切り替える**「適応型DPWM」**が採用されることもあります。

 

 

下記資料は「SiCを用いたSSTの回路図的なイメージ」になります。

 

 

出典:Google Gemini

 

 

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