●インバーター機器開発のトレンド、現状


インバーター機器を小型化・軽量化・高効率化をするために、スイッチング回路の動作周波数を高くする ことが出来る次世代パワー半導体 SiC・GaN の活用や高速で動作する IGBT や MOSFET の採用が盛んに なっています。

スイッチング回路の動作周波数を高くすると、インバーター機器のヒートシンクや平滑フィルタを小さく することが出来るため、小型化・軽量化・高効率化を実現し、コストダウンにも寄与します。

スイッチング動作時に発生する電力損失の一つにスイッチング損失があります。
スイッチング損失はデバイスの入力容量と動作周波数に比例して大きくなるため、電力損失を抑えつつ動 作周波数を高くするためには、出来る限り入力容量の小さいデバイスを選定することが重要です。

適切なゲートドライブ回路を設計し、ドライブ損失を低減するためには、デバイス容量の測定に加えて、 デバイスのゲート抵抗 RG の測定も重要です。


●パワーデバイスの欠陥品や模造品による被害


製造中止や納期問題などにより、正規代理店以外のルートから仕入れたデバイスが製品に組み込まれて出 荷されてしまい、市場で問題が発生するという、デバイスの欠陥品や模造品による被害が全世界で増えて おり、パワーデバイスも例外ではありません。

 

市場で問題が発生した場合、顧客からの信頼失墜や問題解決のためのリソース及び金銭的被害のみならず、 もしも生命の安全に関わるような問題が発生した場合には、企業の社会的責任も問われることになります。

 

パワーデバイス模造品の多くは、電流容量の小さな安価なチップが実装されていることが多く、正規品よ りも格安で流通しています。 正規代理店以外のルートから仕入れたパワーデバイスは、一般的には製造現場などで所有しているカーブ トレーサーを使って、耐圧試験やゲートリークなどの I-V 測定による性能確認を行います。 ただ、電流容量の小さな模造品でも、耐圧性能やゲートリーク性能は正規品と同等の性能を持っているこ とが多く、I-V 測定による性能確認だけでは模造品であることを検知することが困難です。

 

電流容量の小さな安価なチップが実装された摸造品を実際のインバータ機器に実装した場合、大電流を充 分に流せないため長時間動作中にデバイスが発熱し破損しますので、製品が市場に出回ってから、初めて 問題が顕在化する可能性が高くなります。 また、高信頼性を要求される機器へ組み込まれる装置の場合は、予めメーカーから出荷されたデバイスの 中から、ユーザーご自身で出来るだけ特性の良い A 級品デバイスを選別して製品に搭載し、予防的に不具 合発生リスクを低減することも重要です。

 

 

●解決案

スイッチング損失の低減やゲートドライブ回路の最適化、及び、欠陥品や模造品による被害を避けるため には、パワーデバイスの容量測定を実施することがポイントです。

 

例として、TECHMIZE 半導体 CV 特性アナライザ TH510 シリーズをご紹介します。この製品は、スイッ チング損失の重要なパラメータである入力容量 Ciss(Cies)、出力容量 Coss(Coes)、帰還容量 Crss(Cres) を簡単に測定することが出来ます。 さらに、ゲート抵抗 RG の測定も同時に行うことが出来ます。

 

        

 

デバイスを Test Fixture にセットし、蓋を閉じるとインターロックが ON になり、安全に試験を行う準備 が整います その後、本体のタッチパネル画面から、デバイスのデータシートに記載された3つの測定条件(VDS、 VGS=0V、測定周波数)を入力し、測定を実行するだけで、誰でも簡単に各容量及び RG を測定すること が出来ます。

 

        

 

この測定により、出来るだけ特性の良いデバイスを選別したり、最適なゲートドライブ回路設計を行うこ とが出来るようになります。 また、パワーデバイスの模造品に多い電流容量の小さな安価なチップは、正規品と入力容量 Ciss(Cies)、 出力容量 Coss(Coes)、帰還容量 Crss(Cres)の値が大きく異なるため、TH510 シリーズを使った品質チ ェック試験を行うことで、製品に組み込む前に欠陥のあるデバイスを検出可能となります。

 

 

●測定例


TECHMIZE 半導体 CV 特性アナライザ TH510 シリーズを使った測定例を、2つご紹介します。

(1)メーカーA(MOSFET)のデータシートと TH512 での実測結果の比較 TH512 のタッチパネルを用いて、データシートの測定条件(VDS=25V、VGS=0V、f=1 MHz)を入力後、 測定を実施しました。

測定結果として、Ciss= 2063.8 pF、Coss= 152.5 pF、Crss= 14.05 pF、 RG= 3.76 Ωと、データシートの 値と同等の結果が得られています。

    

メーカーA(MOSFET)のデータシートの値

 

 

 

    

TH512 での各パラメータ測定結果と C-V カーブ測定結果

 

 

 

(2)メーカーB(MOSFET)とメーカーC(SiC)の TH512 実測結果の比較

 

    

メーカーB(左、MOSFET)とメーカーC(右、SiC)の各パラメータ測定結果

 

 

    

メーカーB(左、MOSFET)とメーカーC(右、SiC)の C-V カーブ測定結果

 

 

 

メーカーB の MOSFET は Vdss 450 V, IdMax 15 A、メーカーC の SiC は Vdss 1,200 V, IdMax 24 A で、 メーカーC の SiC の方が、高耐圧かつ大電流のハイパワーデバイスです。

 


通常、電流容量はデバイスのチップサイズに依存するため、大電流化するとデバイス容量は大きくなりま すが、入力容量 Ciss の測定値が MOSFET の 2461.3 pF に対して SiC は約 946.8 pF と半分以下となってお ります。



このことから、MOSFET を SiC に置き換えることで、スイッチング周波数を高くすることが可能となり、 インバーター機器のヒートシンクや平滑フィルタを小さくすることが出来るため、小型化・軽量化・高効 率化、コストダウンに寄与することが判ります。

 

 

●まとめ



インバータ機器開発では高効率化やコストダウンのためにスイッチング周波数を高くすることが求められ ており、次世代パワー半導体 SiC・GaN の活用や高速で動作するパワーデバイスの採用が進められていま す。

スイッチング損失はデバイスの入力容量と動作周波数に比例して大きくなるため、電力損失を抑えつつ動 作周波数を高くするためには、出来る限り入力容量の小さいデバイスを選定することが重要となります。

また、パワーデバイスの欠陥品や模造品による被害を避けるためには、カーブトレーサーによる品質確認 試験だけでは検出できないことがあるので、パワーデバイスの容量測定を試験項目に追加することが重要 です。

解決案として、TECHMIZE 半導体 CV 特性アナライザ TH510 シリーズを使ったデバイスの容量及びゲ ート抵抗の測定例をご紹介しました。

パワーデバイスの容量及びゲート抵抗の測定を追加することで、インバーター機器開発時にはスイッチン グ損失改善や最適なゲートドライブ回路設計が可能となります。

また、製造現場の品質性能試験で製品に組み込む前に、より多くの欠陥のあるデバイスを検出可能となり ます。

更に、高信頼性を要求される機器へ組み込まれる装置の場合は、予めメーカーから出荷されたデバイスの 中から、ユーザーご自身で出来るだけ特性の良い A 級品デバイスを選別して製品に搭載し、予防的に不具 合発生リスクを低減することが出来ます。



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