誘電率は、材料の電気的特性を表す重要なパラメータであり、電場作用下での材料の分極能力の強さを表します。電子デバイス、絶縁材料、マイクロ波工学、電磁波吸収材料などの分野で広く応用されています。

■誘電率の概要

定義:誘電率εrは、材料の相対誘電率であり、材料の分極能力と真空の分極能力の比を表します:
εr=ε/ε0
ここで:
•ε:材料の誘電率(ファラッド/メートル)。
•ε0:真空の誘電率(約8.854*10-12F/m)。
種類:
•静電誘電率:低周波または静電場下で測定された値。
•高周波誘電率:無線周波数、マイクロ波、光周波数範囲で測定された値。
誘電率と誘電損失:
•複素形式:
ε=ε’-jε’’
ここで:
•ε’:エネルギー蓄積部分(材料が電力を蓄える能力を反映)。
•ε’’:損失部分(電力が熱に変換される能力を反映)。
•損失正接(Loss tangent):tanδ =ε’’ /ε’。

■誘電率測定方法

①平行平板コンデンサ法

原理:
平行平板コンデンサの公式を使用して誘電率を計算します:
C = εrε0 A/d

手順:
①.サンプルを準備し、一定の厚さの平板に加工します。
②.サンプルを2つの電極の間に挟み、コンデンサを形成します。
③.LCRメーターを使用して容量Cを測定します。
④.電極面積Aとサンプル厚さdを組み合わせて誘電率を計算します。
利点:
•装置が簡単で、低周波または静電測定に適しています。
•精度が高く、均質な媒体に適しています。
欠点:
•サンプルの厚さと電極面積を正確に制御する必要があります。
•高周波では誤差が大きくなります。

②共振器法

原理:
マイクロ波周波数帯で、共振器内の電磁場分布を利用してサンプルの複素誘電率を測定します。
手順:
①.測定サンプルを共振器(マイクロ波共振器など)に入れます。
②.ベクトルネットワークアナライザを使用して共振周波数と品質係数の変化を測定します。
③.次の式を使用して誘電率を計算します:
εr=(f0/fs)2
ここで、f0は空の共振器の共振周波数、fsはサンプルを入れた後の共振周波数です。
利点:
•高周波測定(MHzからGHz)に適しています。
•高感度で、低損失材料の測定が可能です。
欠点:
•測定装置が複雑です。
•サンプルの形状を特定の加工が必要です。

③ベクトルネットワークアナライザ法(VNA)

原理:
材料の高周波電磁波に対する反射係数S11と透過係数S21を測定し、誘電率を計算します。

       

手順:
①.サンプルを導波管または同軸線の中に置きます。
②.ベクトルネットワークアナライザを使用してS11とS21を測定します。
③.反射と透過のモデルを使用して複素誘電率を計算します。
利点:
•高周波範囲(無線周波数、マイクロ波、ミリ波)に適しています。
•複素誘電率ε’’ /ε’を測定できます。
欠点:
•測定装置は周波数帯域に合わせる必要があります。
•測定装置はサンプルサイズに厳しい要求があります。

④時間領域反射法(TDR)

原理:
パルス信号の伝播時の反射特性を利用して誘電率を計算します。
手順:
①.サンプルを伝送線路の媒体として使用します。
②.信号伝播速度vを測定し、次の関係式を使用して誘電率を計算します:
εr=(c/v)2
ここで、cは光速です。
③.信号波形の反射特性を分析し、損失と分極特性を抽出します。
利点:
•高周波過渡応答に適しています。
•不均一材料の局所的な誘電率を測定できます。
欠点:
•分解能と精度はパルス源とサンプリング装置に依存します。

⑤同軸プローブ法

原理:
材料表面に接触すると、プローブが局所的な電場を形成し、インピーダンスを測定して誘電率を計算します。
手順:
①.同軸プローブを測定材料の表面に接触させます。
②.ネットワークアナライザを使用して複素インピーダンスを測定します。
③.既知の校正曲線に基づいて複素誘電率を計算します。
利点:
•液体や柔軟な材料に適しています。
•操作が簡単で、特別なサンプル加工は不要です。
欠点:
•測定精度はプローブの接触方法に影響されます。
•高損失材料の測定誤差が大きくなります。

■測定方法選択の考慮事項

1.周波数範囲:
•静電または低周波(LCRメーターまたは平行平板法)。
•高周波(共振器法、VNA、TDR)。
2.サンプルタイプ:
•固体(平行平板法または共振器法)。
•液体(同軸プローブ法)。
3.損失特性:
•低損失材料は共振器法を使用して精度を高めます。
•高損失材料はネットワークアナライザ法が適しています。
4.サンプルサイズ:
•小サイズ:共振器法または同軸プローブ法。
•大サイズ:平行平板法。

適切な方法を選択することで、エンジニアは材料の誘電特性を正確に測定し、材料開発と性能最適化に信頼性のあるデータを提供できます。

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