半導体CV特性測定器とは、半導体素子に対して印加する電圧と、それに対する静電容量の変化を測定する装置です。
主にMOS構造やpn接合構造を持つデバイスに対して、Capacitance-Voltage(C-V)特性を測定することで、ドーピング濃度、拡散深さ、酸化膜厚、しきい値電圧などの内部パラメータを抽出します。

C-V測定は、非破壊で構造情報を得られることから、研究開発、工程管理、量産検査において重要な役割を担っています。


用途

半導体CV特性測定器は以下のような用途に広く活用されています:

  • パワーデバイスの構造評価(SiC / GaN)
     → 空乏層の制御、ジャンクション特性の確認

  • MOSFET・IGBTなどのしきい値電圧・酸化膜特性評価
     → C-V曲線からCox、Vthを抽出

  • プロセスモニタリング
     → 拡散工程や酸化工程のばらつき・安定性確認

  • MEMSやセンサーデバイスの開発
     → 微小容量変化に対応した測定に最適


測定パラメータ

半導体CV特性測定器では、以下の物理・電気的パラメータを評価することが可能です:

パラメータ名 内容
静電容量(C) 印加バイアスに対する容量の変化量
ドーピング濃度(N) 空乏層容量の変化から逆算可能
拡散深さ ドーピングプロファイルから抽出
酸化膜容量(Cox) MOS構造における絶縁膜容量
しきい値電圧(Vth) C-Vカーブの変曲点から取得
表面界面準位密度(Dit) 高周波と低周波C-Vの差から計算可能

関連用語および定義

用語名 定義
C-V特性 Capacitance-Voltage特性。電圧印加による静電容量の変化を示す。
MOS構造 Metal-Oxide-Semiconductor構造。主にトランジスタの基本構造。
空乏層 バイアス印加により生じる、自由キャリアの少ない領域。
Cox 酸化膜容量。酸化膜厚に反比例し、MOSのスイッチング特性に関係。
Vth しきい値電圧。MOSがONになる電圧条件。
Dit 表面界面準位密度。界面の不純物や欠陥レベルを示す指標。

使用するポイント

  • ✅ 微小容量の高精度測定が必要な場合:1 fFレベルの分解能を持つ装置を選定

  • ✅ 高耐圧デバイス評価:±100 V以上のDCバイアス印加機能がある機種を推奨

  • ✅ 研究用途では解析ソフト連携が重要:LabVIEWやCSV出力対応の装置が便利

  • ✅ 量産ラインでは高速スイープ対応がカギ:装置のスキャンスピードを確認

  • ✅ プロービングシステムとの統合:自動測定環境への対応可否を確認すること


■ アプリケーション(用途例)

● 半導体コンポーネント・パワーデバイス評価

ダイオード、バイポーラトランジスタ(トライオード)、MOSFET、IGBT、サイリスタ、IC(集積回路)、光電子デバイスなどの寄生容量測定およびC-V特性解析に対応。
**ジャンクション容量、空乏層深さ、しきい値電圧(Vth)**などのパラメータを非破壊で抽出可能です。

● 半導体材料(ウェハー)評価

シリコンウェハー、SiCウェハーなどの基板材料に対し、C-V特性を通じたドーピングプロファイル評価や拡散深さの確認が可能。プロセス管理や材料比較検証に利用されます。

● 液晶材料の解析

液晶セルに対してC-V特性測定を応用し、弾性定数や配向特性の解析を行う研究用途にも使用されています。液晶応答の物理モデル化やセル設計最適化のための基礎データ取得が可能です。

● 電気容量部品・センサー評価

コンデンサやキャパシタンス型センサーに対して、電圧印加に伴う容量変化(C-V特性)を定量的に測定・分析。高精度な部品選別や開発初期評価、温度・電圧特性の比較などに最適です。



まとめ

半導体CV特性測定器は、非破壊・高分解能・多用途対応のデバイス評価装置として、今後の先端半導体技術に不可欠な計測機器です。
特にSiC/GaNなどの次世代パワー半導体の普及により、C-V測定の需要は今後ますます高まると見られています。