この記事ではエンジャーさんよりSiglent製SSG5085Aをもとに信号発生器の基本的な操作方法をハンズオン形式で解説しています。

 

測定セットアップ

ここではCW信号や各種変調信号を自在に出力できるようになること目標として、信号発生器のセットアップ手順を説明します。信号発生器の外観・ボタン構成は以下のとおりです。

SSG5085Aのフロントパネル
1. Function keys 6. Direction key
2. USB Host 7. Digital keyboard
3. LF output 8. Touch screen display area
4. RF output 9. Power button
5. Knob  

 図 SSG5085Aのフロントパネル

 

SSG5085Aリアパネル

図 SSG5085Aのリアパネル

接続

信号発生器も他の計測器と同様に、安定した出力を得るために30分程度のフォーミングアップ(暖機運転)を行います。それと同時にSSG5085AのRF出力(RF OUT)端子と、スペクトラムアナライザのRF入力(RF IN)端子をRF同軸ケーブルで接続します。

スペクトラムアナライザ(左:SSA5083A)と信号発生器(右:SSG5085A)を同軸ケーブルで接続した様子

図 スペクトラムアナライザ(左:SSA5083A)と信号発生器(右:SSG5085A)を同軸ケーブルで接続した様子

今回は必要ありませんが、アンプなどのアクティブデバイスを挿入する場合は、必要に応じてアッテネータも接続してください。

 

CW信号

まずは最も基本となるCW(Continuous Wave:無変調連続波)信号を出力してみましょう。CW信号とは周波数と振幅が一定のサイン波(正弦波)のことです。

設定方法

CW信号の設定項目は周波数と出力レベルの2つだけです。

周波数の設定

SSG5085AのフロントパネルのHOMEボタンを押下すると、各種設定項目が表示されます。

SSG5085AのHOME画面

図 SSG5085AのHOME画面

この中のRFをタップすると周波数と出力レベルを設定できるので、FREQをタップしてRF Frequencyに100MHzと入力します。

設定項目の選択

図 設定項目の選択


周波数の設定

図 周波数の設定

出力レベルの設定

出力レベルは同じ設定画面の下部にあるLEVELをタップして設定します。Levelをタップして-20dBmと入力します。

出力レベルの設定

図 出力レベルの設定

出力ON

CW信号の設定はこれで完了です。無変調の信号であるため設定項目も非常にシンプルです。あとはフロントパネルの RF ON/OFF ボタンを押下して、RF OUTPUT端子から信号を出力します。

CW信号の測定波形

図 CW信号の測定波形

するとスペクトラムアナライザの画面中央にピークが発生し、信号が出力されている様子が確認できます。なお、ここではスペクトラムアナライザの設定を中心周波数100MHz、スパン10MHz、ポイント数1001、リファレンスレベル-10dBm、RBW10kHzとしています。ピークサーチ機能を使って波形の最大値を測定してみると、周波数が100.00MHz、レベルが-20.42dBmと設定通りの出力が得られています。ちなみにレベルが設定値よりも0.4dB程度低下している原因は同軸ケーブルの挿入損失によるものです。

 

スイープ信号

SSG5085Aをはじめとした信号発生器には周波数や出力レベルをスイープ(掃引)する機能が搭載されています。

周波数スイープ

周波数スイープは画面下部のSWEEPタブをタップします。

スイープの設定

図 スイープの設定

デフォルトでは Sweep StateがOffになっていますが、ここからスイープ対象を選択できます。周波数スイープする場合はFreqを選択します。

スイープ対象の設定

図 スイープ対象の設定

Freqを選択すると自動的にスイープ信号が出力されますが、一度 Pauseをタップして出力を停止し、Step Sweepの歯車アイコンをタップして周波数範囲を設定します。ここではStart Freqを95MHz、Stop Freqを105MHz、出力レベルは-20dBm、Dwell Timeは1sに設定しました。

周波数スイープの設定

図 周波数スイープの設定

Dwell Timeは滞留時間を意味し、スイープ機能の場合は1周波数ごとの出力時間に相当します。設定が完了したら画面右上のリターンアイコンをタップして、Step SweepをActiveにした状態でContinueをタップすると設定したスイープ信号が出力されます。

スイープ信号の出力

図 スイープ信号の出力

スペクトラムアナライザで波形を確認してみると、1MHzステップで信号の周波数が1秒間隔で変化していく様子が確認できます。

周波数スイープ信号の測定波形

図 周波数スイープ信号の測定波形

出力レベルスイープ

出力レベルをスイープする場合はSweep StateからLevelを選択し、Step Sweepからスイープ範囲を設定します。ここではStart Levelを-80dBm、Stop Levelを-20dBmとし、周波数やDwell Timeはそのままとしています。

出力レベルスイープの設定

図 出力レベルスイープの設定

画面右上のリターンアイコンをタップして、Step SweepをActiveにした状態でContinueをタップすると設定したスイープ信号が出力されます。

出力レベルスイープ信号の測定波形

図 出力レベルスイープ信号の測定波形

すると時間経過に伴って画面中央のピーク信号のレベルが変化していく様子が確認できます。また周波数スイープと違って出力レベルスイープではアッテネータの切り替えが発生するため、出力レベルの変化に伴って内部のRFスイッチが切り替わる音も聞こえるはずです。

 

位相ノイズ

SSG5085Aは高性能な信号発生器で位相ノイズ(Phase Noise)特性に優れています。位相ノイズとは信号の位相が時間的に微小に揺らぐ現象のことで、信号の純度を示す重要な指標です。今回使用しているSSA5083Aにはオプションとして位相測定機能を追加することもできますが、ここでは通常のスペクトラムアナライザ機能を使って位相ノイズを測定してみます。なお信号発生器の周波数は1GHzとし、スペクトラムアナライザの設定は以下のとおりです。

  • Center:100MHz
  • Span:300kHz
  • RBW:100Hz
  • Trace:Average、100回
  • Avg Type:Power(RMS)
  • Detector:Average(Video/RMS/V)
  • Marker1:1GHz
  • Marker2:Delta 1kHz、Noise Marker、Band Span 1Hz
  • Marker3:Delta 10kHz、Noise Marker、Band Span 1Hz

スペクトラムアナライザの測定条件については厳密な規定があるわけではありませんが、可能な範囲でスパン、RBWを狭くすることで高い精度で測定できます。

位相ノイズの測定波形

図 位相ノイズの測定波形

測定波形を見てみると、位相ノイズが存在するためCW信号の裾野が少し広がっている様子が確認できます。また中心周波数から離れるほど裾野の高さが低くなっています。具体的にはオフセット周波数1kHzのマーカー2は -94dBc/Hz、オフセット周波数10kHzのマーカー3は -100dBc/Hzです。この位相ノイズの測定値を見てわかるように、SSG5085Aのような高性能の信号発生器では位相ノイズが非常に小さいことがわかります。

 

AM変調信号

つづいてアナログ変調の代表であるAM(Amplitude Modulation:振幅変調)信号を出力します。AM変調は搬送波(キャリア)の振幅を、変調信号(ベースバンド信号)に応じて変化させる方式です。

CW信号の設定

AM変調信号のキャリアはCW信号です。CW信号の設定はこれまでと同様に周波数100MHz、出力レベル-20dBmとします。

変調設定

フロントパネルのHOMEボタンを押下し、ANALOG MODから変調に関する設定を行います。ANALOG MODをタップすると変調方式を選択できるので、ここではAMをタップします。

変調方式の選択

図 変調方式の選択

AM変調の設定画面では変調信号の波形(Shape)、深さ(Depth)、周波数(Rate)を変更できます。また変調信号を外部から入力したい場合は AM SourceをExtとし、バックパネルのEXT MOD INPUT端子から信号を入力できます。今回は放射イミュニティ試験の波形を模擬するために以下のように設定します。

  • AM Shape:Sine
  • AM Depth:80%
  • AM Rate:1kHz
  • AM Source:Int

    AM変調信号の設定

図 AM変調信号の設定

設定が完了したらAM SteteをOnにして、フロントパネルの MOD ON/OFFを押下して変調信号を出力します。

スペクトラムアナライザの設定

AM変調の帯域幅は非常に狭いため、スペクトラムアナライザのスパンとRBWの設定を変更します。ここでは中心周波数100MHzに対してスパンが20kHz、RBWを100Hzとしています。

AM変調信号の測定波形

図 AM変調信号の測定波形

波形を確認してみると、中央のCW信号の両側に側波帯(Sideband)と呼ばれる変調信号が発生していることが確認できます。この側波帯は変調周波数だけオフセットされており、側波帯の周波数は100MHz±1kHzとなります。また側波帯のレベルは変調の深さに応じて変化し、80%変調の場合は-8dB程度となります。
またこのAM変調信号には側波帯の高調波成分も存在しており、オフセット周波数2kHzにおいて-32dBc程度の高調波が確認できます。理想的なAM変調信号にはこの高調波成分は存在しませんが、実際の信号発生器においてはALCのフィードバックループなどの影響により、AM変調信号に歪みが生じることがあります。
なおこのAM変調信号をオシロスコープで観測すると、キャリアとなるCW信号(100MHz)の振幅が変調信号(1kHz)の包絡線に沿って変化している様子が確認できます。

オシロスコープによるAM変調信号の測定波形

図 オシロスコープによるAM変調信号の測定波形

 

その他の変調信号

SSG5085AはAM以外にも多彩な変調機能を搭載しています。FM(周波数変調)、PM(位相変調)、パルス変調についても試してみましょう。設定手順はAM変調とほぼ同じです。

FM変調信号

フロントパネルのHOMEボタンを押下し、ANALOG MODからFMをタップします。FM変調の設定項目は波形(Shape)、遷移(Deviation)、周波数(Rate)の3つです。周波数遷移はキャリア周波数からどれだけ周波数を変化させるかを示す値です。ここでは各項目を以下のように設定し、FM StateをONにします。

  • FM Shape:Sine
  • FM Deviation:5kHz
  • FM Rate:1kHz
  • FM Source:Int

    FM変調信号の設定

図 FM変調信号の設定

スペクトラムアナライザで波形を確認してみると、キャリア信号(100MHz)を中心にして変調周波数(1kHz)の間隔で多数の側波帯が広がっていることがわかります。またこの側波帯の広がり幅は周波数偏移(5kHz)に対応します。

FM変調信号の測定波形

図 FM変調信号の測定波形

試しに周波数遷移 Deviationを10kHzとしてみると、側波帯の広がり幅が大きくなることが確認できます。

FM変調信号の測定波形(Deviation 10kHz)

図 FM変調信号の測定波形(Deviation 10kHz)

またオシロスコープで波形を観測する場合、キャリア信号の周波数に対して変調信号の周波数が低すぎるため、波形を直接測定しても変調信号はほとんど観測できません。そこで一工夫必要となるわけですが、最も簡単な方法はオシロスコープのサンプリングレートを強制的に低下させて、キャリア信号を排除する方法です。今回はサンプリングレートを10MSPSまで低下させて波形を観測したところ、時間経過に伴って変調信号の周波数が変化している様子が確認できます。

オシロスコープによるFM変調信号の測定波形

図 オシロスコープによるFM変調信号の測定波形

PM変調信号

変調設定画面の下部にあるタブの中からPMをタップします。PM変調の設定項目も波形(Shape)、遷移(Deviation)、周波数(Rate)の3つです。ただし遷移は位相遷移となるため単位はrad、またはdegreeで示されています。ここでは各項目を以下のように設定し、PM StateをONにします。

  • PM Shape:Sine
  • PM Deviation:5708 rad(90 degree)
  • PM Rate:1kHz
  • PM Source:Int

    PM変調信号の設定

図 PM変調信号の設定
 PM変調信号の測定波形

図 PM変調信号の測定波形

スペクトラムアナライザで波形を確認してみると、FM変調信号のようにキャリア信号(100MHz)を中心にして変調周波数(1kHz)の間隔で多数の側波帯が広がっていることがわかります。ただしFM変調信号は側波帯のレベルがフラットに揃っていたのに対して、PM変調信号はキャリア周波数から離れるに従って徐々にレベルが低下していっています。

オシロスコープによるPM変調信号の測定波形

図 オシロスコープによるPM変調信号の測定波形

またオシロスコープでサンプリングレートを低下させて波形を観測すると、1kHzの変調信号が一定の間隔で位相が変化している様子が確認できます。

パルス変調信号

パルス変調(Pulse Modulation)は、RF信号をオン/オフ(パルス状)にする変調方式です。変調設定画面の下部にあるタブの中からPULSEをタップします。パルス変調ではパルス幅(Width)、パルス周期(Period)、モード(Mode)、極性(Polarity)を設定します。ここでは各項目を以下のように設定し、PM StateをONにします。

  • Pulse Source:Int
  • Pulse Out Polarity:Normal
  • Pulse Mode:Single
  • Pulse Period:1ms
  • Pulse Width:100us

    パルス変調信号の設定

図 パルス変調信号の設定

パルス変調は時間軸で測定したほうが波形の全容が理解できるので、ここではオシロスコープで波形を観測します。

オシロスコープによるパルス変調信号の測定波形

図 オシロスコープによるパルス変調信号の測定波形

すると一定周期(1ms)で特定のパルス幅(100us)の信号が出力されていることが確認できます。またパルス部分を拡大すると、パルス信号がキャリア信号(100MHz)によって構成されていることも確認できます。

オシロスコープによるパルス変調信号の拡大波形

図 オシロスコープによるパルス変調信号の拡大波形

スペクトラムアナライザでこのパルス変調信号を観測すると、キャリア(100MHz)を中心にパルス周期(1ms)の逆数(1kHz)の間隔で多数のスペクトルが広がっている様子が確認できます。

パルス変調信号の測定波形(Span:20kHz)

図 パルス変調信号の測定波形(Span:20kHz)

スパンを広げてスペクトラム全体の形状を見てみると、パルス幅(100us)の逆数(10kHz)に応じたsinc関数の包絡線に沿った形状となっていることもわかります。

パルス変調信号の測定波形(Span:200kHz)

図 パルス変調信号の測定波形(Span:200kHz)

パルス変調信号の測定波形(Span:2MHz)

図 パルス変調信号の測定波形(Span:2MHz)


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